ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

オーケストラ・ニッポニカ第43回演奏会

オーケストラ

オーケストラ・ニッポニカ第43回演奏会

《社会への眼差し》
2023年11月12日(日)14時30分開演 紀尾井ホール

  • 池辺晋一郎:悲しみの森 オーケストラのために (1998)
    IKEBE Shin-ichiro (1943-): Les bois tristes : pour orchestre
  • 吉松隆:鳥のシンフォニア(若き鳥たちに)(2009)作品107
    YOSHIMATSU Takashi (1953-): Sinfonia in Birds “for the birds of youth” op. 107
  • 三善晃:谺つり星〈チェロ協奏曲第2番〉(1996)*
    MIYOSHI Akira (1933-2013): Étoile à échos : cello concerto no. 2
  • 林光:第三交響曲〈八月の正午に太陽は…〉 (1990)**
    HAYASHI Hikaru (1931-2012): Third symphony “At noon, the August sun…”

指揮:野平 一郎
チェロ*:横坂 源
ソプラノ**:竹多 倫子
管弦楽:オーケストラ・ニッポニカ
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、公益財団法人 花王芸術・科学財団、公益財団法人 野村財団
アーカイヴ協力:東京音楽大学付属図書館

チケット:全席指定 4,000円、U25席 1,500円
http://www.nipponica.jp/

■参考

ニッポニカ第42回演奏会プログラム

オーケストラ・ニッポニカ第42回演奏会プログラム

≪ニッポニカ設立20周年記念連続演奏会 III≫

オーケストラ・ニッポニカ第42回演奏会
 オーケストラ・ニッポニカ, 2023.3.25
 13p ; 30cm
 注記: 演奏会プログラム ; 日時・会場: 2023年3月25日(土)・紀尾井ホール ; 主催: 芥川也寸志メモリアルオーケストラニッポニカ ; 助成: 芸術文化振興基金助成事業, 公益財団法人朝日新聞文化財団, 公益財団法人野村財団 ; アーカイヴ協力: 東京音楽大学付属図書館

プログラム:

  • 山田耕筰交響詩曼陀羅の華」(1913)
  • 永冨正之:1楽章の交響曲 (1963/67)日本初演
  • 武満徹:冬(1971)
  • 石井眞木:「雅霊」-オーケストラのための-作品85冬(1989)
  • 野平一郎:言葉にならない世界へ(2022)オーケストラ・ニッポニカ設立20周年記念委嘱作品/世界初演

出演:野平一郎(指揮),  オーケストラ・ニッポニカ(管弦楽
内容:
プログラム …2
Profile:野平一郎、高木和弘(コンサートマスター)…3
言葉にならない世界へ / 野平一郎 …4
"Au seuil du monde indicible pour orchestra"楽譜第1ページ …5
Program note / 奥平一 …6-11
 連続演奏会の企画主旨について …6
 作品解説 …6-10
 山田耕筰の生き方について …11
 永冨正之とパリの音楽事情 …11
[ニッポニカ案内] …12-13

ニッポニカ第41回演奏会プログラム

ニッポニカ第41回演奏会プログラム

≪ニッポニカ設立20周年記念連続演奏会 II≫

オーケストラ・ニッポニカ第41回演奏会
 オーケストラ・ニッポニカ, 2022.12.11
 13p ; 30cm
 注記: 演奏会プログラム ; 日時・会場: 2022年12月11日(日)・紀尾井ホール ; 主催: 芥川也寸志メモリアルオーケストラニッポニカ ; 助成: 芸術文化振興基金助成事業, 公益財団法人朝日新聞文化財団, 公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京 ; アーカイヴ協力: 東京音楽大学付属図書館

プログラム:

  • 藤家溪子:思いだす ひとびとのしぐさを(1994)
  • 藤倉大:オーケストラのための「トカール・イ・ルチャール」 (2010/2011)
  • 糀場富美子:未風化の七つの横顔-ピアノとオーケストラの為に(2005)*
  • 諸井三郎:交響曲第2番(1938)

出演:野平一郎(指揮), 阪田知樹(ピアノ)*, オーケストラ・ニッポニカ(管弦楽
内容:
プログラム …2
Profile:野平一郎、阪田知樹、高木和弘(コンサートマスター)…3
Program note / 奥平一 …4-11
 連続演奏会の企画主旨について …4
 作曲家による作品解説 …4-7
 「飲む」訳詩 …5
 作品とその時代 …7-11
クラウドファンディングのご報告と成立のお礼 …11
[ニッポニカ案内] …12-13

オーケストラ・ニッポニカ第42回演奏会

オーケストラ・ニッポニカ第42回演奏会

オーケストラ・ニッポニカ第42回演奏会
≪設立20周年記念連続演奏会 III ≫
2023年3月25日(土)14:30開演 紀尾井ホール

  • 山田耕筰交響詩曼陀羅の華」(1913)
  • 永冨正之:1楽章の交響曲(1963/1967)日本初演
  • 武満徹:冬 (1971)
  • 石井眞木:「雅霊」―オーケストラのための―作品85 (1989)
  • 野平一郎:言葉にならない世界へ (2022)オーケストラ・ニッポニカ設立20周年記念委嘱作品・世界初演

指揮:野平一郎
管弦楽オーケストラ・ニッポニカ

チケット:全席指定 4,000円、U25席 1,500円

  • コンサートイマジン 03-3235-3777 10:00~18:00(日祝休)
  • チケットぴあ https://t.pia.jp/ Pコード:232-747
  • e+(イープラス) https://eplus.jp

主催:芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカ
助成:芸術文化振興基金助成事業、公益財団法人朝日新聞文化財団、公益財団法人野村財団
アーカイヴ協力:東京音楽大学付属図書館

http://www.nipponica.jp/

糀場富美子『未風化の7つの横顔』と『広島レクイエム』

糀場富美子『広島レクイエム』終結部、最下段がアンティークシンバル

作曲家糀場富美子についての情報は、音楽事典やCDの解説などわずかなものしかありませんでした。それによると1952年広島生まれで、芸大大学院修了後の1979年、弦楽合奏のための『広島レクイエム』を作曲。この曲はバーンスタイン小澤征爾始め多くの演奏家により世界各国で演奏されています。今回ニッポニカで演奏する『未風化の7つの横顔』も、原爆の悲惨さを風化させまいとの思いで2005年に作曲された作品です。その年に別宮賞と芥川作曲賞を受賞。

その糀場が登場する2005年の雑誌記事を見つけました。広島出身の医師で作曲もする原田康夫氏が糀場にインタビューしたもので、「原田康夫のオー・ペラペラ対談(第26幕)ゲスト 作曲家・東京音楽大学教授 東京藝術大学講師 糀場富美子 広島レクイエム誕生秘話、バーンスタインが認めた作曲家」というにぎやかなタイトル。『ビジネス界』という広島の出版社の雑誌なので身近な図書館には無く、国会図書館まで出かけて読んできました。

その記事によると、糀場は3歳からピアノを習い始め、小学校にあがると戸田繁子の音楽教室に通うようになりました。糀場は戸田からソルフェージュ、即興演奏、さらに和声学の基本を習い、音楽の才能をどんどん開花させていったのでした。初めてオーケストラの曲を書いたのは芸大3年生の時で、それを芸大オーケストラが演奏したのを聴き、鳥肌が立つほど感激したそうです。それ以来作曲がやみつきになり、器楽だけでなく声楽曲もいろいろ書くようになりました。筆を折らずに書き続けたことで現在がある、と述懐しています。はじけるような笑顔の写真からは、音楽を全身で楽しんでいる姿勢が伝わりました。

恩師の戸田について調べると、島根県出身で1908年生まれ、戦前に東京音楽学校を出て高校教師となり、1958年に退職後、広島市音楽教室を開いていました。糀場より若い教え子には指揮者の大植英次がおり、『広島レクイエム』は大植が初演しています。バーンスタインから音楽の師を尋ねられた大植が広島の戸田のことを伝えると、バーンスタインはびっくりして来日時に戸田に会い、「あなたは偉大な音楽教師だ」と言ったそうです。

『広島レクイエム』のCD解説には、「20年後に書いた『未風化の7つの横顔』では、この曲の祈りのモチーフである三度下降の旋律を用いており、終曲部分の4回鳴る祈りのアンティークシンバルの響きも、ピアノとチューブラベルで『広島レクイエム』を踏襲した形で表現している」とありました。そこで国会図書館の蔵書になっている『広島レクイエム』の楽譜を閲覧したところ、確かに曲の最後にアンティークシンバルが4回鳴らされます(写真)。弦楽合奏曲ですが最後はヴァイオリンとチェロだけが弾いているので、アンティークシンバルはおそらくコントラバス奏者の誰かが鳴らすのでしょう。

『未風化の7つの横顔』のスコアを見ると、曲の冒頭ではピアノとチューブラベルが三度の下降旋律を少しずれながら奏でます。そして曲の最後でもこの2つの楽器にヴィブラフォンとヴァイオリンが加わり、やはり少しずれながら4回和音を鳴らします。この「祈りのモチーフ」をぜひ聴きとっていただきたいと思います。

■参考資料

諸井三郎『交響曲第2番』あれこれ

LP「日本の管弦楽作品1914-1942」

1903年生まれの諸井三郎は、山田耕筰の次の世代に当たる作曲家です。10代の頃から作曲を始め、東京帝国大学在学中には室内楽や歌曲を多く作曲し、仲間と結成した楽団スルヤで発表していました。大学卒業後1932年ベルリンに留学して本格的に作曲を学び、1934年の作品『交響曲ハ短調』は現地で初演されました。日本人の本格的交響作品が海外で演奏されたのは初めてのことでした。

交響曲第2番』は帰国後の1938年に書かれましたが、それは日本が戦争に突入していた時代であり、前年には盧溝橋事件が起こっていました。同年10月の初演を伝えるいくつもの新聞評を先日図書館で閲覧しましたが、各新聞の一面はいずれも日本軍の戦況を伝える記事ばかりでした。諸井自身も1944年に召集され、軍楽隊で活動中に終戦を迎えています。

1972年にビクターから出たLP「日本の管弦楽作品1914-1942」(写真)には山田耕筰以来の管弦楽曲10曲が収められていますが、諸井の『交響曲第2番』もその一つで、戦前の日本の作曲界を代表する作品として評価されていると言えます。

■「日本の管弦楽作品1914-1942」(VX-116~8)収録作品
山田耕筰:音詩「曼陀羅の華」(1913)
・尾高尚忠:日本組曲(1936)
・平尾貴四男:交響詩曲「砧」(1938)
・深井史郎:パロディ的な4楽章(1933)
伊福部昭:土俗的三連画(1937)
早坂文雄:左方の舞と右方の舞(1942)
清瀬保二:日本祭礼舞曲(1940)
・箕作秋吉:芭蕉紀行集(1930)
・諸井三郎:交響曲第2番(1938)
・大木正夫:夜の思想(1937)
(このLPは「現代日本の音楽名盤選」というCDに再編され、諸井作品は品番VICC-23009のCDに収録されています。)

ニッポニカではこれまで諸井三郎の『交響曲ハ短調』『ソプラノのための二つの歌曲』(中原中也詩)『こどものための小交響曲』を演奏しています。また『交響曲第3番』も演奏しているメンバーがいます。
 
諸井三郎に関する書誌は、国立音楽大学図書館発行の『塔』No.16に収録されています。
https://nipponica-vla3.hatenablog.com/entry/2022/04/21/114855

藤家溪子のオペラ『LÀ-BAS OU ICI...』

藤家溪子『LÀ-BAS OU ICI...』

藤家溪子は『ギター協奏曲第2番「恋すてふ」』で2000年に2回目の尾高賞を受賞しますが、その後は夫であるギタリスト山下和仁や子どもたちとのコラボレーションを行っていました。それを一段落させた後はオペラ作曲に挑み、2018年作曲『蝕』をポーランドで初演。現在はアフリカのブルキナファソで現地の音楽家とオペラを制作中です。

そのオペラは『LÀ-BAS OU ICI...』(ラバ ウ イシ)というフランス語のタイトルで、「あちらか、こちら」という意味。藤家によると、アフリカでは欧米や日本などの先進国を「あちら側の世界」とよくいうそうで、それに対しアフリカは「こちら側」。様々な障壁や文化摩擦などがテーマのようです。オペラの第1幕は2021年4月に、第3幕は2022年2月に初演。その第1幕と第3幕の映像が公開されていたので、先日視聴しました。

第1幕は冒頭の藤家の解説のみ日本語であとはフランス語上演だったのですが、第3幕は日本語字幕付きでしたので、内容がよくわかりました。舞台の上手に演奏者4人が座って現地の楽器を奏で、一番客席寄りは藤家でボンゴを叩いていました。その後藤家は後方のキーボートへ移り、時に歌いながら最後までキーボードを演奏。歌詞はフランス語ですが、一時日本語の詞がありました。演奏者は皆巧みで、2時間近い舞台を最後まで集中力の途切れることなく、見事な演奏を聴かせてくれました。

物語は舞台中央に座った男性の語りと演奏を軸に進んでいきました。貧困、中絶、マラリヤ、戦争といったエピソードが語られ、途中で他の役者も加わり、背景の紗幕に波のよせる浜辺や戦死者を弔う葬儀の場面などが映し出されます。海=母のイメージが何度も歌われますが、ブルキナファソは海の無い国なのでした。平和を訴えるメッセージが強く叫ばれました。

藤家の音楽はわかりやすく、最後は聴衆と思われる現地の人たち(フランス人も含む)が参加して、音楽に合わせて踊りながら終幕となりました。オペラの伝統のない国でここに至るまでには、壮絶な時間が積み重ねられたのだろうと想像します。オペラは当初全4幕の予定が5幕になるかもしれず、ブルキナファソは政変もあり、いろいろ流動的のようです。

2つの映像を視聴できたのは、藤家が実施したクラウドファンディングの情報からでした。キャンプファイアーという会社のサイトに載っていたので以下にメモしておきます。

■アフリカの新しいオペラ!ブルキナファソで、現地の人々とじっくり・ガッツリ・コラボ|Campfire
https://camp-fire.jp/projects/view/458192?list=project_instant_search_results

■『LÀ-BAS OU ICI...』第1幕 2021年4月23日 会場:フランス文化研究所・ガーデンステージ(首都ワガドゥーグー)(約1時間)(冒頭に作曲者による日本語解説あり)
https://www.youtube.com/watch?v=MZPtLy9LOh8

■『LÀ-BAS OU ICI...』第3幕(日本語字幕付) 2022年2月5日 会場:Les Bambous, Bobo-Dioulasso, Burkina Faso(約1時間45分)
https://www.youtube.com/watch?v=g2xa_LDflXI

■『LÀ-BAS OU ICI...』公式ホームページ(日本語もあり)
https://www.labasouici.net/