ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

諸井三郎『交響曲第2番』あれこれ

LP「日本の管弦楽作品1914-1942」

1903年生まれの諸井三郎は、山田耕筰の次の世代に当たる作曲家です。10代の頃から作曲を始め、東京帝国大学在学中には室内楽や歌曲を多く作曲し、仲間と結成した楽団スルヤで発表していました。大学卒業後1932年ベルリンに留学して本格的に作曲を学び、1934年の作品『交響曲ハ短調』は現地で初演されました。日本人の本格的交響作品が海外で演奏されたのは初めてのことでした。

交響曲第2番』は帰国後の1938年に書かれましたが、それは日本が戦争に突入していた時代であり、前年には盧溝橋事件が起こっていました。同年10月の初演を伝えるいくつもの新聞評を先日図書館で閲覧しましたが、各新聞の一面はいずれも日本軍の戦況を伝える記事ばかりでした。諸井自身も1944年に召集され、軍楽隊で活動中に終戦を迎えています。

1972年にビクターから出たLP「日本の管弦楽作品1914-1942」(写真)には山田耕筰以来の管弦楽曲10曲が収められていますが、諸井の『交響曲第2番』もその一つで、戦前の日本の作曲界を代表する作品として評価されていると言えます。

■「日本の管弦楽作品1914-1942」(VX-116~8)収録作品
山田耕筰:音詩「曼陀羅の華」(1913)
・尾高尚忠:日本組曲(1936)
・平尾貴四男:交響詩曲「砧」(1938)
・深井史郎:パロディ的な4楽章(1933)
伊福部昭:土俗的三連画(1937)
早坂文雄:左方の舞と右方の舞(1942)
清瀬保二:日本祭礼舞曲(1940)
・箕作秋吉:芭蕉紀行集(1930)
・諸井三郎:交響曲第2番(1938)
・大木正夫:夜の思想(1937)
(このLPは「現代日本の音楽名盤選」というCDに再編され、諸井作品は品番VICC-23009のCDに収録されています。)

ニッポニカではこれまで諸井三郎の『交響曲ハ短調』『ソプラノのための二つの歌曲』(中原中也詩)『こどものための小交響曲』を演奏しています。また『交響曲第3番』も演奏しているメンバーがいます。
 
諸井三郎に関する書誌は、国立音楽大学図書館発行の『塔』No.16に収録されています。
https://nipponica-vla3.hatenablog.com/entry/2022/04/21/114855