ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

藤家溪子のオペラ『LÀ-BAS OU ICI...』

藤家溪子『LÀ-BAS OU ICI...』

藤家溪子は『ギター協奏曲第2番「恋すてふ」』で2000年に2回目の尾高賞を受賞しますが、その後は夫であるギタリスト山下和仁や子どもたちとのコラボレーションを行っていました。それを一段落させた後はオペラ作曲に挑み、2018年作曲『蝕』をポーランドで初演。現在はアフリカのブルキナファソで現地の音楽家とオペラを制作中です。

そのオペラは『LÀ-BAS OU ICI...』(ラバ ウ イシ)というフランス語のタイトルで、「あちらか、こちら」という意味。藤家によると、アフリカでは欧米や日本などの先進国を「あちら側の世界」とよくいうそうで、それに対しアフリカは「こちら側」。様々な障壁や文化摩擦などがテーマのようです。オペラの第1幕は2021年4月に、第3幕は2022年2月に初演。その第1幕と第3幕の映像が公開されていたので、先日視聴しました。

第1幕は冒頭の藤家の解説のみ日本語であとはフランス語上演だったのですが、第3幕は日本語字幕付きでしたので、内容がよくわかりました。舞台の上手に演奏者4人が座って現地の楽器を奏で、一番客席寄りは藤家でボンゴを叩いていました。その後藤家は後方のキーボートへ移り、時に歌いながら最後までキーボードを演奏。歌詞はフランス語ですが、一時日本語の詞がありました。演奏者は皆巧みで、2時間近い舞台を最後まで集中力の途切れることなく、見事な演奏を聴かせてくれました。

物語は舞台中央に座った男性の語りと演奏を軸に進んでいきました。貧困、中絶、マラリヤ、戦争といったエピソードが語られ、途中で他の役者も加わり、背景の紗幕に波のよせる浜辺や戦死者を弔う葬儀の場面などが映し出されます。海=母のイメージが何度も歌われますが、ブルキナファソは海の無い国なのでした。平和を訴えるメッセージが強く叫ばれました。

藤家の音楽はわかりやすく、最後は聴衆と思われる現地の人たち(フランス人も含む)が参加して、音楽に合わせて踊りながら終幕となりました。オペラの伝統のない国でここに至るまでには、壮絶な時間が積み重ねられたのだろうと想像します。オペラは当初全4幕の予定が5幕になるかもしれず、ブルキナファソは政変もあり、いろいろ流動的のようです。

2つの映像を視聴できたのは、藤家が実施したクラウドファンディングの情報からでした。キャンプファイアーという会社のサイトに載っていたので以下にメモしておきます。

■アフリカの新しいオペラ!ブルキナファソで、現地の人々とじっくり・ガッツリ・コラボ|Campfire
https://camp-fire.jp/projects/view/458192?list=project_instant_search_results

■『LÀ-BAS OU ICI...』第1幕 2021年4月23日 会場:フランス文化研究所・ガーデンステージ(首都ワガドゥーグー)(約1時間)(冒頭に作曲者による日本語解説あり)
https://www.youtube.com/watch?v=MZPtLy9LOh8

■『LÀ-BAS OU ICI...』第3幕(日本語字幕付) 2022年2月5日 会場:Les Bambous, Bobo-Dioulasso, Burkina Faso(約1時間45分)
https://www.youtube.com/watch?v=g2xa_LDflXI

■『LÀ-BAS OU ICI...』公式ホームページ(日本語もあり)
https://www.labasouici.net/