ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

ゲーテとヴァレリー

 ゲーテ研究の大家である恩師の講演を久しぶりに聴いた。題は『シュヴァイツァーゲーテ論』。80歳近い恩師はしかし40年前と同じくよどみのない口調で90分を話された。大学を退官後はドイツの大学でゲーテを講じられたとのこと。「最近はドイツでゲーテを学ぶ(教える)人が少なくなり、私のようなものが出かけて行って話をするのです」とおっしゃっていた。ふと日本古典文学を日本語で講じるドナルド・キーンさんを思い出した。
 「memento mori」(メメント・モリ=死を思え)がモットーのロマン主義文学に対し、「Gedenke zu leben」(生を思え)がモットーの古典主義文学を確立したゲーテ(1749-1832)のことを、あれこれ学んだ学生時代にタイムスリップ。そして読んだばかりの堀辰雄『風立ちぬ』の冒頭にあったヴァレリー(1871-1945)の詩の一篇「Le vent se lève, il faut tenter de vivre.」(風立ちぬ、いざ生きめやも。)が頭をよぎる。注解には「生きめやも」は「生きなければならぬ」という意味とあった。ヴァレリーゲーテの間にどんな線が存在するのか知りたいと思う。