ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

2009-01-09の練習日記

『月』は、1時間の予定が倍近くかけて全曲丁寧に進みました。正月休み明けの練習にもかかわらず(それだからかも)、音が熟してきている印象でした。この『月』は11の楽章それぞれの特徴が際立っていて、なおかつ全体のまとまりが美しく響いています。芥川作品に多くみられるオスティナート(同じ音形の反復)の要素は感じられません。終結部に半音違う音が重なる不協和音が特徴ある第6曲「騒ぐ工匠たち、偽りの愛を悲しむ姫」の後に、弦楽器のフラジオ奏法に彩られる第7曲「竹林に降る雪」が続きます(画像参照)。
ヒロシマのオルフェ』第一場で“鏡”がでてくる場面では、弦楽器は四分音(半音の更に半分)で上下するところが8小節続きます。指揮者が「そこはもっとゆがんだ感じに!」と叫ぶのですが、慣れない奏法なので“きれいな音”しかでない、というジレンマに陥る弦楽器奏者が続出でした。またトランペットの鳴っているのを聴いていたら、ベルク(1885-1935)の『ヴォツェック』(1917-22)のような響きを感じるところがありました。20世紀の音楽の潮流を貪欲に吸収して作品に昇華させているという印象です。