ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

伊藤昇『二つの抒情曲』

大木惇夫の本を読んでいたら、北原白秋と三木露風がでてきました。この二人の名前をみたら、伊藤昇作曲『二つの抒情曲』のことを思い出しました。この曲は『黄昏の単調』と『陰影』からなっており、前者は三木露風(1889-1964)の詩から、後者は北原白秋(1885-1942)の詩から着想を得ています。ニッポニカ第4回演奏会で演奏しましたので、そのプログラムから解説を抜粋します。

伊藤昇『二つの抒情曲』    片山杜秀
(前略)
 <黄昏の単調>は、三木露風が黄昏どきの時間の止まったような気怠さをうたった印象派風の同名詩に基づく自由な音のスケッチ。音詩とでも呼ばれるべき種類の音楽だ。テンポはトレ・ラン(極めてゆっくりと)。清瀬保二はこのピアノ版を4分かけて演奏したと、記録にある。(中略)
 <陰影>は<黄昏の単調>と同じく、やはり特定の詩に触発された音楽。こちらの詩人は北原白秋で、その内容は、カフェの女給か誰かの孤独な心象を、時計の針やダンスや無声映画やその伴奏のピアノ音楽などを点綴しながら描いたものだ。まさに大都会の詩であり、モダニストが作曲の素材とするのにいかにも相応しい。(後略)