ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

大田黒元雄『露西亜舞踊』(1926年版)

 ディアギレフが主宰したバレエ・リュスの概要を紹介した、大田黒元雄(1893-1979)の著作。書名の「露西亜舞踊」は普通名詞でなく、「バレエ・リュス」そのものを指している。バレエ・リュスは1909年から1929年まで、パリを中心に公演を重ねたバレエ団だが、本書はそのうち1909年から1924年までの演目や踊り手、スタッフについて記述している。大田黒は1912年から1914年までロンドンに留学しており、その後も何度か渡欧しているので、バレエ・リュスの舞台を実際に観ていた。1917年には最初の『露西亜舞踊』を音樂と文學社から出しており、本書はその約10年後にまとめたもの。
 大田黒は巻頭で「これは絵本である。文章はほんの解説に過ぎない」と述べている通り、本書はまず70枚近い挿絵により、バレエ・リュスの舞台、踊り手、振付や装置や衣裳を担当したスタッフたちを具体的に紹介している。その後に続く本文では、「序説」でバレエ・リュスがいかに一世を風靡した存在であったかを示した後、「年代記」で1909年から1924年まで1年ごとに、各年の上演演目と特徴を紹介。続いて「舞踊音楽」の勃興について触れた後、「舞踊十二番」として代表的な演目のあらすじと見どころを、1917年の『露西亜舞踊』から転載。「ロシア舞踊一覧表」では上演した46作品について、各演目のタイトル(日仏)、装置や衣裳、音楽、振付、初演日時等をまとめている。
 なお本書は、NDL(国立国会図書館)デジタルコレクションにはいっており、同館および図書館送信参加館で閲覧することができる。

露西亜舞踊 / 大田黒元雄

第一書房、大正15.9 [1926]
91p 図版 ; 26cm
750部限定出版、特価7円50銭

内容:
《挿絵》
■原色版
ダフニスとクロエ(バクスト)
ヨゼフ物語―ボテイフアの妻の衣裳(バクスト)
上機嫌の女たち(バクスト)
ペトルウシュカ(プノア)
金鶏第一幕(ゴンチャロヴァ)
ロシアの物語のための衣裳(ゴンチャロヴァ)
奇妙な店(ドラン)
三角帽(ピカソ
ルナァル(ラリオノフ)
レ ビイシュの幕(ロオランサン)

■写真版
ディアギレフ(バクスト)
イゴル公(レエリッヒ)
イゴル公 ―ボルム
韃靼の踊(グルウネンベルグ
フォキン(セロフ)
シェエラザァド
シェエラザァド ―ニジンスキイ
シェエラザァド(グルウネンベルグ
バクスト
火の鳥―カルサヴィナとボルム
カルサヴィナ
カルナヴァル ―ボルム
カルナヴァル(マルティ)
クレオパトラ(バクスト)
クレオパトラ(フェドロヴァ)
妖精
ストラヴィンスキーとニジンスキイ
ペトルウシュカ ―カルサヴィナ
ペトルウシュカ
タマァル ―ボルム
タマァル ―カルサヴィナとボルム
牧神の午後
ニジンスキイ(ブランシュ)
ダフニスとクロエ ―カルサヴィナ
春への犠牲 ―ソコロヴァ
ストラヴィンスキイ(ピカソ
ヨゼフ物語(セルト)
金鶏―カルサヴィナ
パラアドの幕(ピカソ
パラアド―ソコロヴァ
マッシイヌ(バクスト)
ロシアの物語
ロボコヴァ(ピカソ
奇妙な店の幕(ドラン)
三角帽の幕(ピカソ
三角帽の水車番(ピカソ
道化者
レ ファシュウー ―チェルニチェヴァとドラン
結婚
レ ビイシューラ ―ニジンスカ

《本文》
序説 …7
ロシア舞踊年代記 …15
ロシア舞踊と音樂 …37
舞踊十二番 …47

  • タマアル …49
  • 妖精 …52
  • イゴル公 韃靼の踊 …53
  • 薔薇の精 …55
  • クレオパトラ …56
  • カルナヴァル …59
  • シェヘラザアド …60
  • 火の鳥 …63
  • ペトルウシュカ …65
  • 牧神の午後 …69
  • 春への犠牲 …70
  • ヨゼフ物語 …71

ロシア舞踊一覧表 …75
目次 …88
挿絵目次 …90

参考


 1940年から45年まで上海バレエ・リュスに所属していた舞踊家の小牧正英(1911-2006)は、中学生の頃日本で大田黒のこの本に出会い、多くの図版に感動したと述べている。小牧はその時からバレエ・リュスの詳細に触れていたことがよくわかった。