1909年興行主ジァーギレフ(ディアギレフ)によって始められ、1929年の彼の死によって解散したロシア・バレー団(バレエ・リュス)の足跡を、関わった複数の人々の伝記によって浮かび上がらせた書籍。前史として1905年の「血の日曜日」の惨事から書き起こし、ジァーギレフ、ベヌア(ブノワ)、バクストら雑誌『芸術世界』(1898-1904) の同人として集った人々の交流、そこから生まれ出た美術展、コンサートの流れを示す。そしてバレエ団結成の経緯を語るにあたり関わった人々の伝記とロシア・バレー団の初期の年月を交互に置き、重層的に歴史を描き出している。なお各人の伝記は没年まで含むが、年代順の記述は1917年のロシア革命の時期まで。
著者は東京外国語大学ロシア語科出身の図書館学者で、人名のロシア語読みはフランス語表記に慣れた目には最初はなじみにくかったが、ロシア語を含む各国語の参考文献をたんねんに読み込んで語られる内容は、ロシア・バレー団の実態を見事に浮かび上がらせている。
春の祭典:ロシア・バレー団の人々 / 藤野幸雄
晶文社、1982
281, xxp ; 20cm
目次:概要
- プロローグ 1905年:ペテルブルグでの「ロシア歴史肖像画展」
- ジァーギレフ:興業主。『芸術世界』同人。
- 1906-7年:ロシア美術展、ロシア歴代コンサートをパリで開催
- ベヌア:美術家、美術史家。『芸術世界』同人。バレエ団で舞台美術を担当。『ペトルーシュカ』
- 1908年:ロシア・オペラ、バレー公演をパリで開催
- バクスト:画家、舞台美術家。『芸術世界』同人。バレエ団で舞台美術を担当。
- 1909年:セゾン・リュス開始、『クレオパトラ』他上演
- パヴロワ:バレリーナ。1909年『アルミ―ドの館』『レ・シルフィード』『クレオパトラ』に出演。
- 1910年:『火の鳥』『シェエラザード』他
- フォーキン:バレー・ダンサー、振付師。『ペトルーシュカ』
- 1911年:ロシア・バレー団結成、『ペトルーシュカ』初演他
- カルサーヴィナ:バレリーナ。『ペトルーシュカ』で踊り子。
- 1912年:『牧神の午後』他
- ニジンスキー:バレー・ダンサー、振付師。『ペトルーシュカ』でペトルーシュカ。
- 1913年:『春の祭典』他、南米公演
- ルビンシテ―イン:舞踊家、女優。『クレオパトラ』『シェエラザード』
- 1914年:『金鶏』、第一次大戦開戦、バレエ団離散
- ストラヴィンスキー:作曲家、指揮者。『火の鳥』『ペトルーシュカ』『春の祭典』
- エピローグ 1914-1917年:スイスで再結成、アメリカ公演、『パラード』、ロシア革命
あとがき
参考文献
索引(バレー作品)(人名)