ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

ピッツェッティ『交響曲イ調』解説

 I.ピッツェッティ(Ildebrando Pizzetti, 1880-1968)の『交響曲イ調』の解説で、紀元二千六百年奉祝会出版スコアに書かれているものです。表記は適宜現代仮名遣い等に改め改行も追加しました。1940年の演奏では「イ長調」と表記された由来も書かれています。

交響曲イ長調解説
 4楽章、3管編成の交響曲で、他にハープ2台、チェレスタ、打楽器が用いられているが、これらは重用されていない。絃はすこぶる重視され、ヴィオラはヴァイオリン同様第1、第2に分けられている。第1楽章、第2楽章、第4楽章がヘ長調で3楽章がニ長調であるから、交響曲イ長調の呼称は不可解の様であるが、全体の基調をなす音がイ音であり、第1楽章第4楽章共にイ音の上に終止しているので、交響曲イ長調と呼ぶ方が正しい。
 第1楽章は自由なソナタ形式である。最初序奏の如き三拍子の緩徐な部分を経て同じく三拍子の急速な主要部分に入るが、序奏部に現れる主題が4楽章全部を貫く主要旋律なのである。ホルンが冒頭無伴奏で吹き始めるから誰にもそれと解る。急速調に入ってから更に二つの主題が現われて、それ等三つの主題が色々発展する。
 第2楽章三部形式の緩徐調で、最初フルートとファゴットに現れる主題は明らかに第1楽章の主要旋律よりの変形である。
 第3楽章は8分の3拍子の急速調で、殊更スケルツォとは呼んでいないが、トリオもあり、所謂スケルツォとなっている。
 第4楽章は緩徐な序奏を通って荘重な行進曲となるが、いずれも第1楽章主要旋律よりの変形である。普通トリオの来る部分も拍子が3拍子と変わるだけで同一主題であり、結尾の緩徐調も又同じである。こうした方法に依って示されるピツェッティの技巧は誠に驚くべきものがある。
出典:「交響曲イ長調」スコア(紀元二千六百年奉祝会、1940)