ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

菅原明朗『交響的幻影「イタリア」』の景色(3)

 菅原明朗の『交響的幻影「イタリア」』第3楽章のタイトルは、「ジョバンニ・ピサーノ」(Giovanni Pisano)です。作曲者の言葉は次の通り。

 第三楽章の「ジョヴァンニ・ピザノ」は彼の作品というよりも、生涯を歩んだ仕事の道の感銘から作った。父ニコラの工房での徒弟としての十数年、父と共同の仕事をしたその後、父の死後、更に自ら鑿取る力を失った老年期のオルビュートの仕事……立体造形美術は写真に撮すことが不可能である。
 ジョヴァンニの一生は私の範とすべき生涯と信じている。この曲は彼へのオムマッジオである。
出典:『菅原明朗 : 日本の交響作品展 5 』(演奏会プログラム)

 ジョバンニ・ピサーノは13世紀から14世紀にかけて活躍したイタリアの彫刻家で、父のニコラ・ピサーノ(Nicola Pisano)も彫刻家でした。二人はイタリア中部の都市シエナの大聖堂(Duomo di Siena)などを手がけています。「オルビュートの仕事」とは、イタリア中部の都市オルヴィエートにある大聖堂(Duomo di Orvieto)のファサード製作と思われます。Europeanaで検索したら、ジョバンニは1,052件、ニコラは416件もの画像がヒットしました。
 なお3楽章のタイトルは人名ですが、Giovanniがgiovane「若い」という形容詞からきた考えると、「ピサの若者」ということになります(ピサはピサの斜塔で有名な都市)。35年前に自分で使ったパート譜には、鉛筆で「ピサの若者」と記入してあります。菅原先生がおっしゃったのかどうかは記憶にありませんが、他の人のパート譜にも書いてあったので、練習中にそういうお話があったのでしょう。