ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

矢代秋雄『オルフェオの死』から(5)交響曲

 矢代秋雄の遺稿集『オルフェオの死』は全体が4つの部分から構成され、第1部が随筆集、第2部が「自作を語る」「わが先達・わが仲間」、第3部が短文集、第4部が「対談」です。これまで載せてきたのは全て第1部の21の随筆からいくつかを抜粋したものでした。第2部の「自作を語る」には『交響曲』はじめ8つ、「わが先達・わが仲間」には『告白的三善晃論』はじめ30の文章が収められています。その『交響曲』から冒頭を抜粋してみました。初演のプログラムの文章です。

交響曲
 日本フィルの委嘱によって今回定期公演のために書いたこの交響曲は、今年の一月末から、五月なかばにかけて作曲された。元来が遅筆の僕にとって、大変強行軍だったが、ここ数年来、交響曲を書く心の準備が充分出ている様な気がしていたので、あえて強行軍したのである。第一楽章の一部分は、特に冒頭は、パリで書きかけ、遂に完成しなかった交響曲の一部分を転用した。また、第二楽章の特色あるリズムは、十年ほど前、獅子文六の小説『自由学校』のなかの、お神楽のタイコの音を描写した文章を読んだ時、思いつき、ずっと暖めていたものである。即ち、テンヤ・テンヤ・テンテンヤ・テンヤ。(p156)(「日本フィル」1958・6・9)