ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

片山杜秀氏の語る「山田一雄」(その2)

 「『おほむたから』でひとつの頂点に達した」と片山氏が指摘する山田一雄の戦前の作品群を聴いた後には、戦後に作られた2つの映画音楽が映像とともに披露されました。まず終戦直後の『浦島太郎の後裔』で、声明に通じる日本音階で叫ぶ主人公が、改心する場面で流れるのがショスタコービチの第5交響曲、という設定。日本的なるものの否定か?と片山氏のコメント。連合国側の音楽が巧みに用いられています。
 次に戦後20年目(といってももう50年近く前になります)の作品『父と娘の歌』では、宇野重吉演じる父親がオーケストラのクラリネット奏者で、吉永小百合演じる娘はピアニスト。山田一雄指揮のオーケストラをバックにチャイコフスキーのピアノ協奏曲が演奏されました。実際にピアノを弾いているのは室井摩耶子だそうです。リハーサルで間違えたピアニストに対し、指揮者は「だいじょうぶですよ。とにかく最後までやってみましょう。」というようなセリフを語っていました。ロマンスグレーのヤマカズ先生は、映画のためかとてもわかりやすい指揮ぶりでありました。『浦島太郎』もそうですが、映像のイメージに気を取られて映画音楽がどうだったのかよく覚えていません。機会があればどこかでまた観てみたいです。
 片山さんは中学生くらいから日本人作曲家の作品を聴き続けてらっしゃるそうですが、よどみのない口調で山田一雄の世界を縦横に浮かび上がらせてくださいました。写真はやはり中学生くらいから日本人作品を聴き始めたニッポニカの若きチェリストが、片山さんの著書『音盤考現学』にサインをしていただいたもの。ぼろぼろになるくらい読み込まれている本に片山さんもびっくりされていました。