山田和男『おほむたから』は 1944年2月に作曲され、翌1945年1月1日に作曲者指揮によりラジオ(JOAK)で放送初演されました。その後1月24〜26日の日本交響楽団第5回定期公演で舞台初演されました。下記はその舞台初演のプログラム冊子です。
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日本交響樂團 第五(262)回定期公演
第十九樂季(昭和十九年―二十年)
指揮 山田和男
獨奏 フルート 吉田正雄
提琴 西川満枝
洋琴 室井摩耶子
獨唱 高音 三宅春惠
昭和二十年一月二十四日(水)二十五日(木)二十六日(金)午後六時
日比谷公会堂
財團法人 日本交響樂團
一億憤激、米英撃摧
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【p2】
曲目
I ブランデンブルグ協奏曲 第五番 ニ長調……J.S.バッハ
(洋琴、提琴、フルートおよび絃樂合奏)
I 急速に(Allegro)
II 感動的に(Affetuoso)
III 急速に(Allegro)
II 朝日新聞社委嘱作品
「おほむたから」……山田和男
III 交響曲 第四番 ト長調……マーラー
(高音獨唱附)
I 全く平穏に(Recht gemachlih)
II 次第に感動を以て(In gemachlicher Bewegung)
III 靜寂に幾分緩徐に(Ruhevoll: Poco Adagio)
IV 非常に快く:高音獨唱―子供の魔の角笛より
(Sehr behaglich: Soprano Solo---Gedicht aus des Knaben Wunderhorn)
演奏中は御入場をお斷りいたします
警報が午後四時迄に解除されない場合には其の日の演奏は延期いたします
延期された日取り等は決定次第新聞紙上にてお報らせ致します
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【p3】
第263回定期公演豫告 [略]
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【p4-7】
曲目解説
ブランデンブルグ協奏曲第五番 バッハ作[略]
おほむたから 山田和男曲
古事記に出てくる「おほむたから」なる言葉は、現今われわれの用ひてゐる「おほみたから」の源語である。[以下略]
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【p8】
音楽会豫告 [略]
・前回『おほむたから』を演奏した2001年にもこの初演プログラムを探したのですが、その時はN響事務局にてひとつ前の定期公演のプログラムしか見つからず、それに掲載されていた「予告記事」だけ確認しました。今回は日本近代音楽館にてやっと該当プログラムを閲覧できました。『おほむたから』の前に「朝日新聞社委嘱作品」と書かれていました。
・演奏会の回示ですが、NHK交響楽団の前身である新交響楽団は1926年(大正15)10月に発足し、1942年(昭和17)年4月に財団法人日本交響楽団となりました。日本交響楽団としての第5回定期は、新交響楽団から通算262回となります。
・バッハに出てくる「提琴」はバイオリン、「洋琴」はピアノ。マーラーの「高音」はソプラノ。
・作曲者自身による『おほむたから』の曲目解説は、全文が自筆スコアの冒頭に切り貼りされていました。
・公演プログラム冊子を実際に見てみると、終戦直前の東京での演奏会の雰囲気が伝わってきます。そしてその時期であっても盛んに演奏会が開催されていたことを改めて確認しました。