ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

片山杜秀氏の語る「山田一雄」(その1)

山田一雄自筆譜展記念講演会
作曲家 山田一雄マーラー日本的なるもののはざまで
講師:片山杜秀(音楽評論家、慶應義塾大学准教授、東京藝術大学非常勤講師)
日時:2011年11月21日(月)18:30〜19:45
会場:東京藝術大学美術学部中央棟第一講義室
主催:東京藝術大学附属図書館

 小鍛冶邦隆先生の司会で、最初に自筆譜をこのたび藝大に寄贈された山田御秩子夫人の紹介があり、続いて片山さんの講演が始まりました。お話は山田一雄の作曲した作品の録音と映像を挟みながら進みました。

片山杜秀氏により紹介された山田一雄作品等(いずれも抜粋)
(1)ピアノ曲『闘争−短詩−』(1931年)
(2)山田一雄指揮で演奏された東京音楽学校のWagner
(3)小交響楽詩《若者のうたえる歌》(1937年完成、1938年初演)
(4)交響的木曽(1939年完成、1940年初演)
(5)ヴァイオリン・ソナタ(1940年)
(6)おほむたから(1944年完成、1945年初演)
(7)成瀬巳喜男監督『浦島太郎の後裔』東宝、1946)(音楽)
(8)斎藤武市監督『父と娘の歌』(日活、1965)(音楽、指揮)

 最初のピアノ曲『闘争』は、東京音楽学校へ入った年の作品。シェーンベルクを思わせる無調のモダンな曲で、この時代に、しかも音楽学校の教育を受けはじめたばかりの時にこのような作品を書いていたことは驚き、と片山氏。
 『若者のうたえる歌』は多様な要素が交錯する作品ですが、全世界や宇宙全体を取り込んだマーラーの音楽を10分間の中に押し込めた印象。
 『交響的木曽』は二つの民謡が重なって壮大な世界が現れるコーダの部分が流され、ゴドヴァッツの『交響的コロ舞曲』との対比に言及されました。この『木曽』はフランシス・トラビス氏(1990年代に藝大指揮科客員教授)も絶賛していたとのこと。
 『ヴァイオリン・ソナタは近代フランス風の響きの中に日本的情緒が現れる作品。
 『おほむたから』では2001年の演奏会プログラムに片山氏が執筆された解説が配布されました。そして最初に『天台声明』の録音が流され、次にマーラーの『交響曲第5番』と『おほむたから』の冒頭部分および展開部が交互に流されました。「声明」や「マーラー」を山田一雄がどのように自分の作品にと入りれていったか、明確に浮き彫りになりました。そしてすばらしい終結部。
(つづく)