ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

《伊福部昭傘寿記念3》『交響譚詩』(演奏会プログラム)

『寒帯林』(1945)の練習をしていたら、『交響譚詩』(1943)もでてきましたね、という話題になりました。これを演奏したプログラムの一つを載せておきます。

◆書誌データ

交響楽団第143回演奏会
 新交響楽団, 1994.4.23
 [12]p ; 26cm
 注記: 演奏会プログラム ; 日時・会場: 1994年4月23日(土)18:30開演・東京芸術劇場(東京・豊島区) ; 曲目:
  歌劇「どろぼうかささぎ」序曲(1817) / ロッシーニ
  交響譚詩(1943) / 伊福部昭
  交響曲第2番ニ長調作品73 / ブラームス
 出演: 原田幸一郎(指揮), 新交響楽団(管弦楽) ; 主催: 新交響楽団
 内容: 伊福部昭「交響譚詩」 / 上原誠 ; 出演者名簿他

この曲は前年に放射線障害で亡くなった兄に捧げられています。以下は解説の中からの抜粋です。

伊福部昭:交響譚詩 / 上原誠(打楽器)
 伊福部昭の音楽は先回の当団演奏会で取り上げた最初の管弦楽曲『日本狂詩曲』から今日に至るまで、一貫して色濃く民族的色彩を帯びているが、これについて彼は自らの創造理念を次のように語っている。「作家は自己に忠実であれば、民族的である以外にありようはない。……芸術はその民族の特殊性を通って共通の人間性に到達しなければならないと考えている」そのルーツをたどれば、彼の家計が天皇家に比肩し得るほど古いもので、代々神官を務め「老子」を家学とする生粋の大和民族であること、また幼年時代に北海道の僻地で先住のアイヌ民族や、主に東北地方からの開拓農民らの生活・文化に深く関わることによって、民族間の差異を直接膚で感じ取った原体験など、生まれ・生い立ち・生活環境の特異性をあげることができる。しかしこれを真に決定付け、不動のものにしたのはロシア人音楽家アレクサンドル・チェレプニンとの出会いだった。(中略)
 曲の2つの部分はいずれも強く民族的色彩感を感じさせながら極めて明白な対比を見せている。すなわちアレグロ・カプリッチオーソの第1譚詩は力強くリズミックであるのに対し、アンダンテ・ラプソディーコと指示された第2譚詩は静かな中にも大変表情豊かな広がりを聞かせ、伊福部作品としては例外的に静かなまま幕を閉じる。兄に対する哀悼の気持ちが込められているのであろう。(後略)

参考:「交響譚詩」(伊福部昭公式ホームページ>伊福部作品の世界>戦前・戦中作品)
http://ifukube-official.kifu.officelive.com/works6.aspx