8月13日は2000年に亡くなられた上原誠さんの命日です。新交響楽団の打楽器奏者であった上原さんは、新響演奏会プログラムに数々の原稿を寄せられました。それらはご自身で収集された数多の資料に基づくもので、年月日順一覧は下記のとおりです。
最も多いのはヨーロッパの作曲家とその作品についての解説記事。マーラーからブリテンまで、守備範囲の広さに改めて驚きました。そして次は日本人作曲家。芥川也寸志、伊福部昭のほか、小倉朗、近衛秀麿、小山清茂、柴田南雄、山田耕筰の名があがっています。
個々の作曲家や作品についてだけでなく、山田一雄指揮邦人作品初演曲リストや、新交響楽団の演奏記録も丹念にまとめられています。
ご自身が担当されていた打楽器についての記事もありました。上原さんは演奏会に行くと、いつもプログラム冊子の余白に、当日演奏された曲の打楽器配置図をスケッチされていました。そのこだわりが原稿にもにじみ出ています。1987年の「訪中雑記」は、中国作品に使う打楽器を調達しに上海へでかけた話です。
亡くなられた直後の第171回演奏会プログラムには、打楽器のK.I.さんによる追悼記事がありました。そこには上原さんが日本人作品の演奏に必要な打楽器をいつのまにか調達されていたこと、近代音楽史についての豊富な知識に基づく解説記事を執筆されていたこと、「紀元2600年」の時代の音楽状況や、山田一雄先生の評伝を書くのがライフワークとおっしゃていたことなどが書かれていました。上原さんといっしょに舞台にのれないのは実に残念です。ご冥福をお祈りいたします。
■上原誠執筆記事一覧:新交響楽団演奏会プログラムより
【発行年月日】 記事タイトル | 新響演奏会タイトル |
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【1983.11.01】 柴田南雄 北園克衛の「三つの詩」 | 第101回:マーラーシリーズ5 |
【1984.06.24】 ベートーヴェン 交響曲第3番変ホ長調作品55「英雄」 | 第104回 |
【1984.09.26】 グスタフ・マーラー 交響曲第3番ニ短調:楽曲構成と歌詞対訳 | 第105回:マーラーシリーズ6 |
【1985.01.27】 近衛秀麿(編曲) 越天楽 | 第106回 |
【1985.04.07】 (小山清茂)主要作品表 | 第107回:日本の交響作品展9 小山清茂 |
【1986.09.23】 「曼荼羅の華」山田耕筰 | 第112回 |
【1987.04.05】 訪中雑記 | 第115回:中国作品展 |
【1987.06.21】 「ダフニスとクロエ」第2組曲(ラヴェル):太鼓叩きが薀蓄を傾ける | 第116回:マーラーシリーズ9 |
【1987.09.26】 ルトスワフスキの道 | 第117回 |
【1988.04.03】 マヌエル・デ・ファリャ:作品と年譜 | 第119回:マヌエル・デ・ファリャ |
【1988.07.31】 打楽器セッティング図鑑《マーラー編》 | 第120回:マーラーシリーズ11 |
【1989.04.01】 ストラヴィンスキー:舞踊音楽「ペトルーシュカ」1911年版 | 第123回 |
【1990.07.22】 ローマ観光一日コース レスピーギ:交響詩「ローマの松」 | 第128回 |
【1991.01.19】 現代音楽といえば打楽器 | 第130回:現代の交響作品展’91 |
【1991.04.21】 スクリャービン 交響曲第2番 | 第131回 |
【1991.11.04】 R.シュトラウス 歌劇「ばらの騎士」組曲 | 第133回 |
【1992.01.19】 ベルク 歌劇「ヴォツェック」より3つの断章 | 第134回 |
【1992.04.11】 打楽器の喜び | 第135回:現代の交響作品展’92 |
【1992.07.19】 山田一雄指揮 主要邦人作曲家別初演曲リスト | 第136回:山田一雄追悼 |
【1992.10.04】 バルトーク:オーケストラのための協奏曲 | 第137回 |
【1994.04.23】 伊福部昭:交響譚詩 | 第143回(伊福部昭・傘寿記念シリーズ3) |
【1994.07.23】 伊福部昭:管弦楽のための「日本組曲」 | 第144回(伊福部昭・傘寿記念シリーズ4) |
【1994.10.10】 伊福部昭:シンフォニア・タプカーラ(1979年改訂版) | 第145回:伊福部昭・傘寿記念シリーズ5 |
【1994.10.10】 伊福部昭年譜、作品年譜 | 第145回:伊福部昭・傘寿記念シリーズ5 |
【1995.01.16】 ドビュッシー:海−3つの交響的素描 | 第146回 |
【1995.04.30】 かつて、彼の時代は(マーラー) | 第147回 |
【1995.10.15】 ヒンデミット:ウェーバーの主題による交響的変容 | 第150回 |
【1996.07.06】 新交響楽団・邦人作品演奏記録 | 第153・154回:日本の交響作品展'96 |
【1998.01.17】 ブリテン:シンフォニア・ダ・レクイエム | 第160回 |
【1999.04.17】 伊福部昭:シンフォニア・タプカーラ | 第165回・九州演奏会 |
【1999.07.11】 芥川也寸志:交響三章、交響管絃楽のための音楽、絃楽のための三楽章、交響曲第1番、エローラ交響曲、えり子とともに、煙突の見える場所、猫と庄造と二人のをんな、赤穂浪士、八甲田山 | 第166回・芥川也寸志没後10年 |
【1999.07.11】 新交響楽団・芥川作品演奏記録 | 第166回・芥川也寸志没後10年 |
【2000.07.15】 小倉朗:管弦楽のための舞踊組曲 | 第170回 |