ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

久保禎作曲「弦楽四重奏曲『哀歌』」

 マニラの室内楽演奏会で演奏された委嘱作品。チェロが薩摩琵琶を模したようなところがありました。一度しか聴けなかったのですが、"dona nobis pacem"という言葉が頭をめぐっていました。作曲家から寄せられプログラムに掲載した解説を載せます。写真は室内楽の演奏会場入り口。

久保禎 : 弦楽四重奏曲「哀歌」 曲目解説
 失われしものたち、あるいは消えゆくものたちへ心からの感謝と哀悼を込めて。そして、そのかけがえのない生命を永遠に記憶しておくために。
 弦楽四重奏曲「哀歌」は、日本の雅楽能楽義太夫節、私の故郷・鹿児島の民謡を素材とし、伝統音楽や郷土芸能の技法および形式等を援用しながら、東アジア特有の変幻自在な音空間を創造しようと試みている。そこでは、日本や東アジアの伝統美術で用いられる「ぼかし」や「かすれ」、「にじみ」の音楽的転用、また、「ゆらぎ」や「フラクタクル」、偶発性、重層性を取り入れた非線形的・非定量的な時空構造も取り入れられている。西洋の精緻な音楽とは異なる、東アジア固有の悠久たる夢幻の世界が立ち現われるはずである。その中から、私たちに共通する「哀しみ」、「祈り」、そして「希望」を聴きだして頂ければ幸いである。
 関係各位に心から感謝申し上げますとともに、両国の永遠の友好を心から希望致します。