ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

二人のフランシスコ:F.サンティアゴとF.ブエンカミーノ

 『20世紀のアジアの作曲家たち』の「フィリピン」の章の初めに、20世紀前半の状況をまとめた文章が掲載されています。その文章には、2月のマニラ公演(室内楽演奏会)で取り上げる2人の作曲家が登場します。ピアノ作品『Nocturune in Eb minor』の作曲家フランシスコ・サンティアゴと、おなじくピアノ曲『Marigayan Bati(Birthday Greeting)』の作曲家フランシスコ・ブエンカミーノです。さらにマルセロ・アドネイはブエンカミーノの師で、ニカノ・アベラルドはブエンカミーノの弟子でした。最初にこの文を読んだときは人物が全く見当つきませんでしたがでしたが、それぞれの横顔がすこしずつわかってくると、なるほどと思いました。

 第二次世界大戦以前、ヨーロッパ=スペイン文化に大きく影響されたフィリピン人は、前世紀から引き継いだ多様な混合文化を形成していた。ローマ・カソリックの非常に強い影響の下、マルセロ・アドネイに代表される作曲家たちが活躍した。彼の宗教的な作品は、19世紀のスペインの伝統を模範としたものである。続く世代として、ホセ・エステラ、フランシスコ・サンティアゴ、そして“クラッシック”すなわち“芸術音楽”の領域で「バリタオ」をはじめとするスペイン=フィリピンの民族音楽を採用したフランシスコ・ブエンカミーノが登場した。1920年代から1930年代にかけて近代フィリピンが設立された頃、西洋の模範に従って形成されたある種の“音楽におけるモダニズム”は、ニカノ・アベラルドのような作曲家たちに代表される。しかしながら、1934年にアベラルドが若逝したため、また、作曲家たちの大多数はまだ19世紀のヨーロッパ“ロマン主義”そして“ナショナリズム”に由来する意識にその焦点を当てていたため、アベラルドが開拓した新しい土壌へと向かう潮流は、多くの後継者を生むことはなかった。

出典:『20世紀のアジアの作曲家たち』p103

フィリピン公演作曲者一覧 http://d.hatena.ne.jp/nipponica-vla3/20130122

『20世紀のアジアの作曲家たち』目次 http://d.hatena.ne.jp/nipponica-vla3/20130108/1357596080