ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

中村鶴城琵琶リサイタル『一遍上人琵琶伝』

 今日は急に時間が空いたので、琵琶楽を聴いてきました。中村鶴城さんは2007年ニッポニカのハノイ公演武満徹『ノヴェンバー・ステップス』を共演していただいて以来のご縁です。長年ビオラなる西洋楽器に親しんでいますが、琵琶なる邦楽器は触ったことはもちろん身近で見たこともありませんでした。演奏旅行中に琵琶のことをあれこれ教えていただき、『琵琶を知る』という本を出されているというので帰国して早速入手し読んでみました。これまで全く知らなかった世界が拡がりました。それから2008年のリサイタル『鑑真和上琵琶伝』、2009年『役行者琵琶伝』と聴かせていただき、今回が3回目のリサイタルでした。(役行者を「えんのぎょうじゃ」と読むことも初めて知りました。)
 琵琶に興味を持ったひとつの理由は、鶴城さんが琵琶楽を英語で"Storytelling with Biwa"とされていたことがあります。図書館の勉強をしていた時、児童図書館員の仕事の一つにStorytelling(おはなしを語る)があることを習いました。琵琶楽も音楽だけでなく「語り」がいっしょなんだということにびっくりしたわけです。(ノヴェンバー・ステップスには残念ながら「語り」はありませんでした。)今回のリサイタルも、どちらかというと「語り」が主で、琵琶は途中のここぞというところにはいります。『平家物語』の一節も引用されていました。オデュッセイアと同様に、日本にもたくさんの口承文学があることを思い起こしました。
 鶴城さんは琵琶楽を継承していくためには、『平家物語』のような悲劇ばかりでなく、新しく明るく未来につながる物語を紡いでいきたいとの思いで、創作琵琶楽に取り組んでらっしゃいます。「鑑真」も「役行者」も、そして今回の「一遍上人」も、偉大な先人の足跡を感動的に伝える作品に仕上がっていました。会場には年配のお客様に混じって若い世代の方も多く見受けられ、琵琶楽を楽しんでらっしゃる様子が伝わってきました。

琵琶演奏家/中村鶴城WEBSITE
http://www.diana.dti.ne.jp/~pipars/index.html