ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

サティ『幕間』

エリック・サティの映画音楽『幕間』がいかに荒唐無稽かというのを説明するのは至難の業なので、演奏会プログラムから秋山邦晴さんの解説を引用させていただくことにします。

「幕間」(1924年) 作曲:エリック・サティ
 フランスの異色の作曲家エリック・サティ(1866-1925)の最後の作品にバレエ<本日休演>(1924)がある。ダダイストの画家・詩人ピカビアの台本・美術・演出、スウェーデン・バレエ団のジャン・ポルラン振付のナンセンスなバレエだった。
 このバレエの幕間(まくあい)――つまり休憩時間に上映される映画としてつくられたのが文字どおり「幕間」という題名をもつこのフィルム。これもピカビアの台本、そして当時まだ無名だったルネ・クレール監督を演出に登用した。これまたパリのダダ・グループのメンバー総出演のナンセンスなユーモアに溢れる作品。
 はじめのほうで、ピカビアとサティ自身も登場し、シャンゼリゼ劇場の屋上から、エッフェル塔めがけて、大砲をぶっ放したりする。また屋根の上で画家のデュシャンマン・レイがチェスをしている。後半は若い狩猟家(ジャン・ボルラン扮)は第3の男に射殺され、葬儀となり、ラクダに引かれた柩(ひつぎ)のあとを正装した紳士淑女が行列をつくってついていく。ところが、そのうち霊柩車がラクダから離れて、逃げだす……。大混乱となる。
 サティは彼晩年の“家具の音楽”の思想でこの映画音楽を作曲。単純な音のパターンの繰り返し構造で映像を説明すること、意味づけすることを拒絶している。(秋山邦晴
出典:『映画生誕100年記念 : 新交響楽団第148回演奏会』(新交響楽団、1995)