ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

『オデュッセイア』その3

4/13の続きです。写真は満開のトネリコです(右の常緑樹は月桂樹)。トネリコトロイア戦争のあった3千年前から同じ花を咲かせていたのでしょうか。そんなことを考えるのも、『イリアス』『オデュッセイア』という物語が3千年の時空を越えて現代に伝わっているからです。この物語は最初は口承で、その後写本によって伝えられてきたわけですが、口承や写本ですから途中でいろいろな話が付け加わったり削られたりしてきたことと思います。しかし昔トロイアで戦争があったこと、英雄が帰還したことはきっと事実なのでしょう。シュリーマンが遺跡を発掘して証明したのですから。そして更に日本語への翻訳者の手を経て私たちはこれを読む事ができます。
翻って音楽のことを考えると、作曲者がいて演奏者がいて楽譜があって初めて過去の音楽が現代にそして未来へ伝わります。ニッポニカで続けてきたのもそうした伝承のひとつの環なのだなあと思います。現代では口承や写本だけでなく、録音やブログやツイッターも伝承メディアになり得ますが、電気にたよらず伝えられるのはやはり紙の楽譜かもしれません。紙の楽譜も現在はPC入力されたものを使うのが一般的になってきましたが、手書きの楽譜にこめられた作曲者の思いを想像する楽しみは捨てがたいものがあります。もっともこのごろは作曲者もいきなりPCに入力する時代になりましたが。ホメロスがPCで『オデュッセイア』を書いたとしたらと想像するのはなかなか面白いです。(完)