ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

間宮芳生『現代音楽の冒険』

 間宮芳生(まみや・みちお、1929-)が世界の諸民族の民俗音楽との関わりや、創作の方法について、縦横に語った本。

現代音楽の冒険 / 間宮芳生
 岩波書店、1900
 211p ; 18cm (岩波新書 ; 新赤版123)
目次:
はしがき
プロローグ 音楽の原点を探る:「いたこ」の口寄せ…1
 節つき音読/音読の仕掛け−旋法/音読の仕掛け−リズム/ことばと音声/文字と意味をつなぐ音読/メロディーの原形/口承の鎖/「いたこ」の口寄せ/「いたこ」の芸の型
1 現代音楽への出発 : 「ハヤシコトバ」とセリエリスム…23
 ハヤシコトバと出会う/農民音楽とバルトーク/厖大な民俗資料/どどいつ型と俳句型/ハヤシコトバの様相/激動の世紀・激変する音楽/セリエリスムの流れ/芸術と理性と/バルトークの作曲理論/レンドヴァイの分析の盲点/ウェーベルンと音楽の未来/「代掻き唄」の解析/「合唱のためのコンポジション第1番」
2 映画、詩、そして「弦楽四重奏…59
 野田真吉の仕事/映像作家たち/「マリン・スノー」/黒田喜夫の詩の衝撃/精神の飢餓感/「原点破壊」から弦楽四重奏へ/シェーンベルクからの示唆/特殊奏法を活用する/ペンデレツキの衝撃/ポーランドからの新しい風
3 二人のジョン : ケージとコルトレーン…91
 音楽とはコンポーズ/「コンポーズ」からの離脱/ケージ効果(1)不確定性の利用と図形楽譜/ケージ効果(2)「奇行」の作用力/ケージ効果(3)「東洋的美」への関心/楽譜と記録/インド音楽−音楽的語彙の伝承/ジャズとは何か/黒人霊歌/ジャズの窓口・コルトレーン/ジャズのルーツ・アフリカ/灼熱する悲しみ/磨かれ、鍛えられた伝承の美しい形
4 足の裏の音楽 : オペラとオーケストラ…115
 オペラ「ニホンザル・スキトオリメ」/アフリカの伝承音楽から/オーケストラ作品を作る/足の裏の音楽
5 西のリズム 東のリズム : コルトー催馬楽…129
 居心地悪いリズム/旭川での幼時/レコード漬けはたのし/コルトーの神技/脈動する円運動/加速しながら「またぐ」/ゆっくりまたぎ/会津の「催馬楽」/リズム・ユニットとことば/馬子唄のリズム/「拍の裏」をためる/日本のリズムの二つのタイプ/音調言語の性格/音節の長短/オペラ「鳴神」へ
6 音楽のもつ力 : ヨーイク・呪文・いのちの叫び…163
 フィンランド訪問/フォーク・ミュージックの町/サーミ族の音楽ヨーイク/トーキング・ドラム/マウス・ハープ/言葉かくしうた/メロディーに隠された物語/メロディーの伝承/ヨーイクから作品へ/「オンゴー・オーニ」の作曲/返されたいのちが呼ぶ声/「セレナードII番」
7 都市文化と基層文化 : 音楽の南北問題…191
 原音楽がもつ二つの側面/「合唱のためのコンポジション第八番」/「日本的」音楽とは/音楽の東西問題/「聞き換え」と南北問題/ミニマリズムと音楽の肉体性/都市文化と基層文化
エピローグ たった一人の反乱 : ストラヴィンスキーから私の冒険へ…207

 付箋をつけた言葉

 だが、民族音楽が真に大切なのは、もっと別の理由からなのだということも見えてきた。それは、世代を超えて受け継がれ、うたい継がれながら鍛えられ、磨かれた美しい形、芸術のすばらしい規範であるすぐれた単純さである。でもそれは、形式や語法の単純さの意味ではなく、むしろ精神の明快さと、優しさなのだ。民俗音楽を聞き、分析する作業をするということは、そういう規範に常に触れていることになる。(p113)

間宮芳生 http://www.genuine.jp/mamiya/
岩波書店
https://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/43/8/4301230.html