ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

菅原明朗『交響的幻影「イタリア」』の景色(1)

 菅原明朗の『交響的幻影「イタリア」』(Italia : Immagine Sinfonica per Orchestra)は3楽章からなりますが、それぞれタイトルが作曲者によりつけられています。まず第1楽章は「聖アポッリナーレ新聖堂とクラッセの聖堂」(S. Apollinare Nuovo e in Classe)です。これについて作曲者は次のように述べています。

 第一楽章はラヴェンナの聖アポルリナーレ両天守堂のモザイクの幻影である。何故聖ヴィターレとガルラ・プラチィディアを取り上げなかったかという人があるかも知れないが、私が心を打たれたのは新天主堂の身廊両側面の殉教者達の行列とクラッセ凱旋門及び正面のモザイク……その平面性の美観であった。
 現在の写真技術ではモザイクの美を復元する事は全く不可能である。私の感銘の薄らがない中にそれを書き残して置きたかった。それがこの曲である。
出典:『菅原明朗 : 日本の交響作品展 5 』(演奏会プログラム)

 これらの聖堂やモザイクは、実際にはどのようなものなのでしょうか。聖堂のあるラヴェンナは、イタリア東部の都市で、アドリア海に面し、ローマ時代から栄えました。「聖アポッリナーレ新聖堂」(Basilica di Sant'Apollinare Nuovo)は、5世紀末頃建設されました。美しいモザイク画が非常に有名だそうです。「クラッセの聖堂」はラヴェンナ近郊の町クラッセにあるBasilica di Sant'Apollinare in Classeのことで、6世紀半ばの完成。こちらもモザイク画が有名だそうです。
 比較されている「聖ヴィターレ」(Basilica di San Vitale)と「ガルラ・プラチィディア」(Mausoleo di Galla Placidia)には、どちらも見事なモザイク画があるそうです。これら4つの聖堂は皆「ラヴェンナの初期キリスト教建築物群」として世界遺産に登録されています。
 それぞれの聖堂の画像は、Europeana(ヨーロピアナ)の検索窓に元の綴りをいれると、それぞれの画像コレクションをみることができます。Europeanaは欧州委員会が公開している、欧州の文化遺産データのポータルサイトです。

Europeana http://www.europeana.eu/portal/

 35年前にこの曲を演奏した時は、このような景色は全くわかりませんでした。現代は自室にいながらにして瞬時に情報を得ることができるようになりました。もっともいくら現代の技術でも、菅原のいう様にモザイクの美を復元することはできませんが、片鱗に触れることはできるでしょう。