ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

三善晃『遠方から無へ』から(5)モンブラン先生

 三善晃(1933-2013)は東大仏文科3年になった1953年、来日中の作曲家レイモン・ガロワ=モンブラン(Raymond Gallois-Montbrun, 1918-1994)に出会いました。この縁で三善は1955年にパリ高等音楽院に留学してモンブランに師事。その後モンブランは1963年にパリ音楽院の院長になっています。

それはそれで
 大学三年になったとき、滞日中の作曲家R.ガロワ・モンブラン先生が、作曲の個人指導をなさるときいて、お尋ねした。(中略)
 夕方の先生のお宅に、なにやら「フランス料理」めいたいい香りがやわらかく満ちていたこと、ボン・ソワール、メートルのほかは何一ついえなかったこと――天もご照覧あれ、当時の私は仏文科に席を有していた――のほかには、今も記憶にあるのは、その場での聴音の試験だった。
 先生の弾かれるピアノの複雑な不協和音、協和音、即興演奏の音名、調性など、訊かれるままに即答するわけだが、音はわかっても、♯♭のフランス語を当時の私は識らなかった。(p192‐193)

出典:三善晃著『遠方から無へ』(白水社、1979)
ボン・ソワール bonsoir =今晩は、メートル maitre =先生

三善晃〔東京コンサーツ〕http://www.tokyo-concerts.co.jp/index.cfm?lang=jp&menu=artists&artistid=035