ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

矢代秋雄『オルフェオの死』から(9)三善晃『交響三章』

 三善晃の『交響三章』のスコアが音楽之友社から1963年に出版されましたが、それについて矢代秋雄が評した文章です。初出は『音楽芸術』1963年9月号。

 出版された総譜は、やや小さめな玉が、品のいい黒インクで浮上っており、大そう美しく、しかも一寸クリームがかった紙の色によくうつって非常に鮮明である。わりつけなども、少しも無理がなく、小節の間隔は広すぎず、せますぎず、まことに読みやすく、眺めているだけでもこころよい。(中略)三善君のあの独特な透明な響きを紙上から如実に感じさせるのだから不思議である。きっとこの版下を書いた人は、ただの職人サンではなくて、三善君の作品を日頃愛聴して、心をこめてこの仕事をしたのだ、と私は想像する。(p181)

 そのように激賞していると同時に、記譜について生原稿から印刷にする際に、作曲家の習慣や不注意を編集してほしい、という希望も述べています。

 声を大にして言いたいのは、生原稿を、版下屋さんに渡す前に、それを細部まで読みこなし、すっかり整理する専門家や、楽譜の校正、用語の統一や訂正のスペシァリストが編集スタッフに絶対必要だ、ということである。(p183)

 手元にあるスコアは2002年版の2014年4刷ですので、この楽譜はきっとよく売れているのでしょう。矢代秋雄の指摘が反映されているのかどうかわかりませんが、美しいスコアです。