ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

唯是震一『続・私の半生記』:『カプリチオ』作曲

 震一はコロンビア大学での勉学に励み、いろいろな作品を作曲しました。そして夏になりました。

一九五四年八月十六日(月)
 夜は徹夜で写譜。“筝、チェレスタとオーケストラの為のカプリチオ”を完成しました。(中略)これから、今朝頼んだ楽譜のコピーを受け取りに出掛けます。そして、この作品のオーケストレーションに取り掛かるわけです。
(中略)
 CBSテレヴィ委嘱の曲(カプリチオ)をオーケストレーションしています。


一九五四年八月二十七日(金)
…私は新作の総譜が出来ましたので、明日、カウエル先生を田舎(シェディー)に尋ねて、スコアにお目を通して頂き、アドヴァイスをお願いしようと思っています。


一九五四年八月二十八日(土)
…先生の家はウッドストックから車で十分少々のシェディーというところに在ります。先生の一軒家は小高い丘の森の中にあり、静かなたたずまいです。昼間からこおろぎの声が聞こえ、何ともいえない雰囲気に包まれています。お話によると、先生の作品の大部分はこの家の二階の一室で書かれたとか、僕も将来、こんな静かな所に書斎の一つも持てたらいいと思いました。


一九五四年九月十一日(土)
 九日にオリヴァー・ダニエル氏(前にストコフスキー氏に紹介して呉れたCBSのプロデューサーでアメリカ作曲家協会のエグジクティブ・マネージャーでもある人)から夕刻、電話があり、十日(金)の夜、ディナーに来るように、そしてその折、新しい作品を持参して欲しいと連絡がありました。
(中略)
 ディナー前に、新作(彼の依頼で書いたのです)のスコアを見せた所、大変なお気に入りで、早速ストコフスキー氏に指揮を依頼しよう。日程は十月のある日曜日にして、ステージでなく、放送にしようと思うと話していました。曲名は、'capriccio for koto, percussion and orchestra'です。

引用:唯是震一『神仙調舞曲:続 私の半生記』(砂子屋書房、1988)p223-232より

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昨日のエントリーにカウエル先生の写真を追加しました。