日本経済新聞日曜掲載の俳壇・黒田杏子選には、毎年原爆忌と終戦日の句が多く選ばれています。八月は歳時記では秋になりますので、今年も先週と今週にそれらの句が多く登場しました。戦後65年たってなおこのように多くの句が生まれていることの意味を深く感じます。
日経俳壇 黒田杏子選 2010年(平成22)10月10日
父母ありて祖父母のありて原爆忌 猪熊明美
昏れてなほ渇きに渇く原爆忌 杉本秀明
児を背なに真つ黒骸原爆忌 露崎理男
黙祷と祈りの坩堝原爆忌 松本壽賀子
戦跡のいづこも茶色敗戦忌 和久井武
八月となりて土中の骨疼く 高野公一
慷慨はやがて祈りへ終戦日 山口恒雄
象使悲しみ癒えず敗戦日 平田百合子
八月六日透きとほる白き数珠 池田勝栄
語部の二世三世原爆忌 小林恕水
綿入れの防空頭巾蝉しぐれ 加藤賢
曳かれゆく蝶の骸や原爆忌 宮澤なみ江
−−−10月17日
封印の六十五年原爆忌 田村昶三
戦死者の餓死者多数と敗戦日 土井きよ
終戦忌挺身隊の碑を洗ふ 浜崎浜子
八月や天上天下戦友(とも)の貌 上村慶一
被爆者のテレビに合はす手に涙 夢野夢幻
愚かなる戦を嗤ふ終戦日 船所信一
慰霊碑にふれ炎天のみんな過去 小池成功
骸(むくろ)
坩堝(るつぼ)
慷慨(こうがい):うれいなげくこと
嗤(わら)ふ