ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

『月』の前書

『月』の放送台本には、各場面のストーリーが詩の形式で書かれており、その「前書」は次の通りです。(脚本:水尾比呂志)

前書

九世紀の半ば頃に成立した、作者不詳の日本最初の説話文学「竹取物語」は、清浄な霊を宿すとされる竹の中に月世界から降誕して、竹細工を業とする老夫婦に育てられ、類ひない美女に成長したかぐや姫の物語である。姫が、帝をも含む数多の貴人の求愛をすべて却けて月へ帰って行った、といふ非情なストーリイには、清澄神秘な月の美しさと人間世界から隔絶したその超越性に対する、古代日本人の深い憧れと畏れとが感じられる。
現代の日本人も、月の美しい夜には誰もがこの古い物語を想ひ出すのだが、私たちは、さういふかぐや姫にも、人間の純粋な愛に感応する心があったことを、信じたく思う。
この作品は、月を見上げながら現代の音楽と舞踊が描き直した、新しい竹取物語の映像絵巻である。

原文では第2段落が「現代の日本人も、目の美しい夜には〜」となっていたのですが、ここは明らかに「月の美しい夜は〜」の間違いでしょう。上記は修正したテキストです。これも一種の写本ですね。