ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

映画『風立ちぬ』観てきました

 宮崎駿監督の『風立ちぬ』、美しい映像、重たい時代背景、飛行機と共に飛翔する主人公、堀辰雄の世界との交錯、どれも心に響きましたが、独文科出身としてはさまざまな隠し味もよかったです。セリフの中に何度も出てくる『魔の山』はトーマス・マンの初期の大作ですが、その舞台は菜穂子の入院する「サナトリウム」。二郎が高原のホテルで出会うドイツ人はカストルプと言いましたが、これは『魔の山』の主人公「ハンス・カストルプ」。彼がピアノを弾いて歌った"Das gibt's nur einmal"(ただ一度だけ)という曲は、ドイツ語会話の最初の時間にドイツ人の先生が聴かせてくれた、1931年のドイツ映画『Der Kongress tanzt(会議は踊る)』の主題曲。もっともこんな情報はすでに巷に広まっているのでしょうね。
 二郎が帰宅途中に買う「シベリア」というお菓子、カステラの間に餡がはさんであるの、どうしてシベリアっていうか知ってますか。私がどこかで聞いたのは、シベリアの雪原を流れるアムール川を表しているもの、というものです。そのほか1930年代の都会の風物がいろいろでてきて興味深かったです。
 そういえば大澤寿人の神風協奏曲(ピアノ協奏曲第3番)は1938年の曲ですが、題材となった朝日新聞の取材飛行機神風号が東京〜ロンドン間の飛行記録を打ち立てたのは1937年でした。まさに堀越二郎ゼロ戦の設計にとりかかっていたころのことです。映画のパンフレットに年表が載っていてとてもよくわかりました。

大澤壽人「神風協奏曲」http://d.hatena.ne.jp/nipponica-vla3/20101124/

『日本の交響作品撰集』(演奏会プログラム)http://d.hatena.ne.jp/nipponica-vla3/20100909/