1週間ほど前から読んでいた堀田善衛(ほった・よしえ、1918-1998)の『インドで考えたこと』(岩波新書、1957)を読み終わった。作家の堀田善衛は1956年晩秋から翌年初にかけて、第1回アジア作家会議出席のためインドに滞在し、この本は会議の参加者との交流やインドの風物をめぐって考え感じたことをまとめたもの。参加した国々は日本、北朝鮮、蒙古、中国、南北両ヴェトナム、ビルマ、ネパール、インド、パキスタン、セイロン、アフガニスタン、イラン、ソヴェト、シリア、エジプト。またアジャンタやエローラの遺跡をめぐった話もはいっている。西欧中心でない世界観、価値観といったものに触れた衝撃が、読み終わって頭の中をぐるぐるしている。堀田の『美しきもの見し人は』(新潮社、1969)は長年愛読しているが、彼の原点のひとつを見た気がする。芥川也寸志がエローラ石窟を訪れたのは1956年4月から7月のアジア連帯会議文化使節団の旅行だったので、その直後の訪問記である。芥川も堀田も多くの文化人と交流していたので、どこかで接点があるのだろうと思う。
今日は映画『手塚治虫のブッダ:赤い砂漠よ!美しく』を見てきた。1972年から10年以上かけて連載された手塚の『ブッダ』を元に映画化されたもので、全3部作の第1部とのこと。どおりでブッダ(シッダールタ)の生誕から修行にでるまでを描いていて、悟りを開くのはまだ先と最後にナレーション(吉永小百合)があった。それはともかく、インドの大自然は雄大だが人々の争いと苦悩は昔も今も変わらない。手塚治虫のヒューマニズムが第2部以降でどう映像化されるのか見てみたい。