ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

ヘンリー・カウエル

 ストコフスキーの来日公演の5年後、奥田恵二氏は『アメリカの音楽』(音楽之友社、1970)という本を出されています(写真)。『「アメリカ音楽」の誕生』(2005)を著すより35年も前です。その中で作曲家ヘンリー・カウエル(Henry Dixon Cowell, 1897-1965)については7ページに渡りかなり詳しく触れておられます。冒頭のところを紹介します。

 カウエルは東洋音楽に対してのみならず考え得るあらゆる実験に手を染めた実験作曲家だったが、そうした試みのうちで最も成功したのは単音を用いる代わりにその近くの音を全部同時に鳴らして音の塊りを創る「トーン・クラスター」(音の房)という方法だった。(中略)そのほか、テレミンという電気楽器の応用や、ピアノの蓋をあけて直接に絃を弾く方法を考え出したのも彼だったが、このような様々の実験や目新しさにもかかわらず、彼は自国や他国の民謡、ニューイングランドの賛美歌、フューギング・テューンなどを素材にして作曲することが多かった。(p253)

 また本の序説に、アメリカ音楽の特徴をカウエルの言葉で記しています。

 ヘンリー・カウエルが「ヨーロッパの作曲家については、かなり正確に、彼らが表現主義者であるか、印象主義者であるか、あるいは無調主義者であるか、多調主義者であるかということが可能であるが、アメリカの作曲家の場合はこういう術語を当てはめることは実際上不可能に近い。なぜならばアメリカのほとんどの作曲家は、それらの要素の混合体を自分たちの作品のうちに持っているからである。」と述べているように、現在のアメリカはある意味では健全な不統一性を形作っていると言えるようである。(p14)