ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

林光「人の心に届くもの」

 今朝(4/3)の日本経済新聞朝刊文化欄は、作曲家林光さんの「人の心に届くもの」という文章でした。すこしだけ引用します。

 ぼくは1951年に原民喜の詩「原爆小景」を知り、1958年にその中の「水ヲ下サイ」から書きつぎはじめ、全四章の合唱組曲が完結したのは2001年だった。
(中略)
 「原爆小景」全九章のうち八章は原民喜がこの目で見たものについてうたわれているが、ひとつはちがう。それは最終章の「永遠(とわ)のみどり」で、「ヒロシマのデルタに若葉うづまり」とはじまるこの詩で、詩人は見ていない、見ることのできないものについてうたっている。見えないものを見るのが詩人だと言っているように。
(中略)
 そのうえで、なのか、けれども、なのかわからないが、ぼくは思う。そのように「届けることができる」もの、「届いた」ことが目で手で確かめられるものでない「届けもの」、つくる者、送り出す者が、時間をかけ手間をかけ渾身のちからで生み出して人々の精神にはたらきかける「もの」が、やがて必要になる、いやいま必要なのだと思うのだ。

 (ニッポニカでは2008年の第14回演奏会で林光さんの交響曲を演奏しています。http://www.nipponica.jp/concert/concert_history.htm#026