ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

大木惇夫−宮田毬栄

 宮田毬栄著『追憶の作家たち』を読み終わりました。登場する7人の作家のうち、私が読んだことのあるのは松本清張くらいなのですが、他の人たち、西條八十埴谷雄高島尾敏雄石川淳大岡昇平日野啓三それぞれの作家としての生き様が伝わってきて、編集者としての宮田の力量の深さ・大きさが推察できました。それぞれの作家の作品をぜひ読んでみたいものだと思っています。そして優れた編集者との出会いが作家の命運を左右するのは、音楽の世界でも同様かと思われます。
 宮田の父親・大木惇夫について、大岡昇平の章にわずかに語られていました。

…ある時は、中国の美術品を扱う雪江さんの店「雪江堂(せっこうどう)主催の“斎白石展”が都内のデパートで開かれ、会場で江馬氏にお会いしたこともあった。斎白石の絵はのびやかで、毛筆による大胆な造形があたたかい。私は酒に酔った李白を描いた絵を、李白好きの父に買ってあげられたら、と思いもした。高価すぎてそれは無理だったけれど。父を疎ましいと思いつつもそんな気持ちが掠めるのだから、父と娘の関係は不可解だ。…


出典:宮田毬栄著『追憶の作家たち』(文春新書、2004)p185