ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

大木惇夫『緑地ありや』第2章

大木は恵子の家を何度か訪ねるうち、父親は松江で事業をしていて不在なこと、寝たきりの祖父や身体の弱い母親、小さい弟妹たちの様子がわかってきます。そして頻繁な手紙のやり取り、外で待ちあわせての初めての接吻。

人を待つ夜のひとときは
風のそよぎか、ためいきか、
花ある橡(とち)の葉がくれに
月明かりこそ忍びたれ。
    ― 花ある橡

父の仕事を手伝って得た駄賃で、ハイカラな便箋を買ってラヴ・レターを書きました。瀬戸内海を見下ろす丘で恵子は『ホフマンの舟唄』を歌い、イタリア文学の話をしたり。そして翌日から毎日恵子の家で英語を教えることになりました。