久しぶりのサントリーホールで第30回芥川也寸志サントリー作曲賞の選考演奏会を聴きました。
第30回芥川也寸志サントリー作曲賞選考演奏会
2020年8月29日(土)15:00 サントリーホール大ホール
■第30回芥川也寸志サントリー作曲賞候補作品
- 冷水乃栄流:『ノット ファウンド』オーケストラのための(2018-19)
- 小野田健太:『シンガブル・ラブII-feat.マジシカーダ』オーケストラのための(2018-19)
- 有吉佑仁郎:『メリーゴーラウンド/オーケストラルサーキット』オーケストラのための(2019)
■第30回芥川也寸志サントリー作曲賞選考および表彰
・選考委員:金子仁美、福井とも子、望月京 司会:長木誠司
https://www.suntory.co.jp/suntoryhall/feature/summer2020/akutagawa.html
第30回の候補作、第1曲目はベートーヴェンの第九交響曲を素材に、作曲者の自由な発想で切り貼りし、未知の世界へ誘う作品。耳になじんだ旋律があちこちに登場し、それが跳躍するかと思うとすかさず別のモティーフが現れます。タイトルの「ノット ファウンド」は、インターネットの情報をクリックするとたまに現れるリンク切れの表示。まさに若い感性とエネルギーに満ちた作品でした。
第2曲目はプログラムノートでは1990年代のJ-Popが素材のひとつとのことですが、そういえばどこかで聴いた覚えのある旋律が紡がれていきます。中でもピアノパートは重要で、おもちゃのピアノも横に置かれ、ソリストのようにメロディーを奏でます。低音の旋律が続くと思えばそれは隣のハープパートで、実に存在感のあるやりとりを楽しめました。
第3曲目は「メリーゴーラウンド」というタイトルの通り、オーケストラが指揮者を中心に二重の円を描いて配置され、コンサートマスターは右端に、4人のホルンパートは客席に背を向けて、といった具合。演奏が始まると視覚的にも楽しい舞台でしたが、配置の割には音響全体が溶け合って伝わってきました。
選考の結果は第2曲の小野田健太さんの作品が選ばれました。なお審査員の方々がおっしゃっていた通り、どの作品も作曲家の個性が沸き立ち、エンターテインメント性を備え、オリジナリティのある優れた作品でした。昨年の選考演奏会も聴きましたが、ずいぶんと様変わりしている印象でした。若い才能に拍手。