1933年に来日したタンスマンは、世界をめぐる演奏旅行の途中でした。全体の旅程を知りたいと思いましたが、資料が見つかりませんでした。ところが今日タンスマン協会サイトの作品目録を眺めていたところ、ピアノ曲の中に「Le Tour du monde en miniature (1933)」(ミニチュア世界旅行)というのを発見。1933年の旅行はまさに来日時のそれです。この曲は次の15の部分から成り立っており、演奏した土地を題材に作曲したものと思われます。タイトルの拙訳です。
●ピアノ曲
ミニチュア世界旅行(1933)
15枚のトラベルシート
- カリフォルニア州ハリウッドのココナッツ園(米国)
- ホノルルのワイキキビーチ(ハワイ)
- 日光の悲歌(日本)
- 上海の鳥市場(中国)
- 香港の寺院の鐘
- フィリピン諸島
- シンガポールの蛇使い
- ペナンのジャングルの猿
- バンドンの森の竹笛(ジャワ)
- バリのガムラン(ワヤン―影絵芝居)
- セイロンの白い象
- ボンベイの爆竹塔
- ナイル川の夜
- プエルト・デ・ソレル(バレアレス諸島)
- ナポリ
演奏時間:22分
初演:1934年ロンドン、BBC、アレクサンドル・タンスマン(ピアノ)
出版:M.Eschig
管弦楽版あり
日本の所は「日光の悲歌」としました。元のフランス語は「Complainte de Nikko」で、おそらく日光東照宮が徳川家康の墓所であることから哀悼の意を表したのでは、と類推します。タンスマンは徳川家から日本刀を寄贈されていますので、家康のことも聞き及んだのではないでしょうか。そして滞在中に日光へ小旅行したものと思われます。どんな曲か聞いてみたいものです(小川典子さんの録音が出ています)。説明書きの最後に「管弦楽版あり」となっていたので、管弦楽曲の項目も見てみました。
●管弦楽曲
ミニチュア世界旅行(1933)
15枚のトラベルシート(第1~10番のみ)
楽器編成:2 (aussi 2 picc)/1 (CA)/2(cl.b.)/1 - 2/1/0/0 - timb., perc., (trg., cymb., tom-tom, gong), glock., xyl., cél., pno - cordes
演奏時間:14分15秒
未初演、未出版、自筆譜がBnF(フランス国立図書館)にあり、ピアノ版あり。
こちらは未演奏なので、自筆譜を見てみたいものです。金管は薄いものの打楽器が充実していて、アジアの響きがするのでしょうか。
- タンスマン協会サイトの作品目録(フランス語のみ)