『日本洋楽外史』第5章「昭和時代」の4は、暗黒時代として戦時下の音楽界と聴衆の様子です。
■日本洋楽外史 : 日本楽壇長老による体験的洋楽の歴史 / 野村光一,中島健蔵,三善清達(ラジオ技術社,1978)
野村「もう一度行っておきたいことは、戦争中にやめさせられたユダヤ人の中で、そのまま日本に残ってくれた人がいるでしょう。この人たちが戦後の日本の音楽教育に絶大な貢献をしてくれたということだね。クロイツァー、プリングスハイム、モギレフスキーといった人たちだ。」(p277)
野村「(戦時中は)物質が何もなかったでしょう。だから、慰めとか楽しみといったって精神的なものを求めるよりほか、仕方がなかったんですよ。そうなると純音楽みたいな純粋な芸術が一番の楽しみになったんだね。」「レコード会社もみんな軍需工場になっちゃってレコードもない。そうすると、生の演奏会しか音楽が聴けないということで、演奏会がかえって盛んになっちゃった。」(p278)
中島「〜ユダヤ人排撃が日本人の指揮者を登場させるという結果を生んだわけだ。ところが演奏する曲なんてちっとも変っちゃいないんだな。いまでもはっきりおぼえているけど、戦争中にダンディの『フランス山人の歌による交響曲』なんか聴いててね、その時はある意味で日本脱出だよ。聴いている間は日本がどんな状態になっているかなんてまったく関係ない。まさに国際場裡に入っているわけだ」(p281)
三善「野村さんの『名曲に聴く』を見てびっくりしたんですよ。それはあの本が作られた時点で、作品についていえば現代曲と非常な古典以外、ほとんど網羅されて今と殆ど変らないということですね。僕にとってはまったく新鮮な発見でした。」(p291)
参考
- 『オーケストラ・ニッポニカ第3回演奏会』(演奏会プログラム)
http://d.hatena.ne.jp/nipponica-vla3/20100903/1283513099