ニッポニカが演奏したCD『小杉太一郎の純音楽II』が、このたびSalidaから発売されることになりました。収録されるのは小杉太一郎(1927-1976)作曲の『交響楽』(1953)と『綾の太鼓』(1963)ですが、録音に際して『綾の太鼓』に関する資料をいろいろと渉猟しましたので、ブログに載せておきます。
『綾の太鼓』台本
小杉太一郎『綾の太鼓』は1963年に作曲、上演されましたが、その台本は次の通りです。それによると、『綾の太鼓』は能の『綾鼓(あやのつづみ)』の前作とされる『綾の太鼓』という作品をテーマにしているそうです。元のストーリーは「高貴な女性に恋した庭男が、綾の鼓を与えられそれを鳴らせば思いをかなえさせると言われて叩くが、鳴るわけもなく、狂乱して池に身投げする」というものです。それを1963年の公演では、以下のように自由に発展させた作品に作り上げられています。
江口隆哉舞踊公演台本・11月25日(月)サンケイホール
昭和38年度第18回文部省芸術祭参加「日本の太鼓」第三作〈綾の太鼓〉
原案 江口隆哉
台本 吉永淳一
作曲 小杉太一郎
装置 高田一郎
衣裳 有賀二郎
舞踊構成 江口隆哉
これは、台本以前の枠のみであって、あくまで準備稿である事を御諒承下さい。テーマとしては、能の「綾の鼓」の前作、「綾の太鼓」に於ける悲劇の主人公である庭男を、悲劇としてでなく、飽く迄も、恋に生きた男として、その恋の讃美を、日本の民俗芸能の中にある各種の太鼓踊りの技法に基づいてうたいあげようとするものです。(吉永淳一)
前奏
幕あく
- 男、太鼓を打つ、
- 打つうちに、狂いはじめ、太鼓の鳴る音が聞こえてくる。
- 男、太鼓を打ちながら、池の底に沈んでいく。
- 池の底で、狂った男の歓喜。
- 男、なお進んでゆき、滝の門をくぐると、太鼓の装置にかこまれた、別の世界に出る。
- 装置に仕組まれた女性5人が、綾の太鼓を持ち、男とからんで踊る。
- 5人の女性は装置にかえり、一方の装置から太鼓を持った7人の男性が現われ、男が、その7つの太鼓を打ちながら踊る。
- 7人の男性消える。
- 男、装置に仕組まれたいろいろの太鼓を、或いは弱く、或いは強く打ち、太鼓を打ち鳴らしながら踊る。
- その大太鼓につれて、小さい太鼓を持った女大勢が出て踊る。
- 女大勢が消え、幻の女が太鼓を持って出る。男がその太鼓を打ちながらの2人の踊り。
- 胸に太鼓をつけた男性群15人が出て、太鼓を打ち鳴らしながら踊る。
- 舞台まわり、正面に出た男、綾の太鼓を打つ、その音が大きく響きわたるうちに幕。
- 出典:『現代舞踊』第11巻11号 11月1日 [1963年か]
- CD「小杉太一郎の純音楽II」〔Salida(サリーダ)〕
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