ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

武満徹・芥川也寸志『太平洋ひとりぼっち』その1

 第32回演奏会でとりあげる武満徹組曲『太平洋ひとりぼっち』は、1963年に公開された日活映画『太平洋ひとりぼっち』の映画音楽から、1996年に編集されたものです。映画のDVDがでていますが、詳細は次の通り。スコアを開いて映画を観ると、組曲では楽器編成などに手が入っているのがわかります。

■映画『太平洋ひとりぼっち

 キャスト: 石原裕次郎森雅之田中絹代ハナ肇浅丘ルリ子
 スタッフ: 堀江兼一(原作)、市川崑(監督)、和田夏十(脚本)、芥川也寸志武満徹(音楽)
 1963年 日活 97分 カラー
 BBBN-4101(発売元:日活、販売元:ハピネット

佐藤利明(娯楽映画研究家)のDVD解説より

 昭和37(1962)年8月12日(日曜日)。当時、23歳だった堀江謙一青年が、サンフランシスコのゴールデンゲートブリッジの下を通った。同年5月12日(土曜日)に、長さ8.5メートルのヨット「マーメイド号」で、兵庫県西宮市の港から密かに出航してから94日目のことだった。日本人として初の太平洋単独横断を達成してのサンフランシスコ入港は、大きな話題となった。パスポートを持たずに出航した堀江にとっては、密入国での強制送還を覚悟していたというが、そのチャレンジ精神と偉業が大きく評価され、大歓迎を受けた。この時の航海日誌をもとに出版されたのが、菊池寛賞を受賞した「太平洋ひとりぼっち」(文芸春秋社・当時)だった。
(中略)
 山崎善弘のキャメラ、藤林甲の照明、松山崇の美術、橋本文雄の録音と、日活を支えたスタッフが、市川崑独特のビジュアルやサウンドを演出。武満徹芥川也寸志による音楽も実に素晴らしい。ヨットの中、孤独にさいなまれるシーンに、使われた具体音楽(ハサミやチェーンなどの器具を使うミュージック・コンクレートの手法)の斬新さ。テーマ曲「太平洋ひとりぼっち」は、武満のトリビュートコンサートや、アルバムなどでもカバーされている。また青年がヨットで口ずさむ「有難や節」(1961年・守屋浩)や「上を向いて歩こう」(1961年・坂本九、米ビルボード誌でチャートインするのは1963年になってから)、そしてハワイの日系人向け放送から流れる村田英雄の「王将」(1961年)を聞いて、「将棋のコマをヨットに置き換えたら、今の僕の心境にピッタリ」と青年が独白する。まさに唄は世につれである。

 この解説に取り上げられている「上を向いて歩こう」はチャプター3、「王将」はチャプター11にでてきます。

■チャプター

(★印は組曲にとりあげられた箇所)

  1. オープニング★
  2. 北風!★
  3. あか出し
  4. 父と子
  5. 伊豆七島〜太平洋へ
  6. 死ぬ時はお母ちゃんと呼んでや!
  7. 水がない!
  8. ひとりじゃない★
  9. 搭載品リスト
  10. 快適なヨット生活★
  11. 太平洋ど真ん中
  12. DAIJYOBI?
  13. 出発の日
  14. サンフランシスコ
  15. エンディング

■オーケストラのための組曲太平洋ひとりぼっち』」(1996)

 組曲に取り上げられた6曲は、下記の場面にでてくる音楽から編曲されているようです。

1曲目:チャプター1の冒頭
2曲目:チャプター1の出航のところ
3曲目:チャプター2。最初から9:30あたり
4曲目:チャプター8。最初から45:00あたり
5曲目:チャプター10。最初から52:28あたり
6曲目:チャプター10。最初から59:15あたり