バリトンの河野克典さんのリサイタル、すばらしい歌声によるシューマンの世界にしばし遊びました。歌に寄り添うピアノも聴きものでした。長年の研鑽が豊かな果実に熟しているのがにじみ出ていて、どの曲もよかったのですが、3曲目の『二人の擲弾兵』には圧倒されました。というのも曲は教科書に載っていたから知っていたものの、ハイネの歌詞を見たらロシアの捕虜となったフランス兵がドイツを経由して帰国する途中、ナポレオンが捕らわれたことを知り、皇帝を守るのだ!と歌い上げるもの。しかも曲の後半はラ・マルセイエーズが高らかに響くではありませんか。チャイコフスキーの序曲『1812年』の正反対の曲なのです。
ドイツの詩人になぜこんな詩があるのか不思議に思ったら、物知りピアノ弾きのMさんが、「ハイネはドイツからフランスに移住していて、この詩もフランス語版があり、それにはワーグナーが曲を書いている」とのこと。
帰宅してLPコレクションからフィッシャー・ディスカウの録音を引っ張り出し、繰り返し聴いたのでした。
河野克典バリトンリサイタル 歌の旅 vol.5 『詩人の恋』
2017年5月28日(日)14時開演
東京文化会館小ホール
http://www.k-kono.com/schedule.htm
プログラム シューマン作曲 ハイネ詩
Buch der Lieder 「歌の本」
Liederkreis " Op.24 リーダークライス
- Morgens steh' ich auf und frage 朝 僕は目覚めると考える
- Es treibt mich hin 僕のこころを駆り立てる
- Ich wandelte unter den Bräumen 僕は木樹の下をさまよいあるく
- Lieb' Liebchen, 可愛い娘よ
- Schone Wiege meiner Leiden 僕の苦悩の美しいゆりかごよ
- Warte, warte, wieder Schiffmann 待ってくれ 威勢のいい船乗りさん
- Berg' und Burgen schau'n herunter 山々や城が見おろしている
- Anfang wollt' ich fast verzagen 初め僕は絶望するところだった
- Mit Myrten und Rosen ミルテと薔薇で
Dichterliebe, Op.48 詩人の恋
- Im wunderschönen Monat Mai 美しい五月に
- Aus meinen Tränen sopriessen 僕の涙から
- Die Rose, die Lilie, die Taube バラを ユリを 鳩を 太陽を
- Wenn ich in deine Augen seh' きみの瞳をみると
- Ich will meine Seele tauchen 僕のこころを沈めよう
- Im Rein, im heiligen Strome ラインの聖なる流れ
- Ich grolle nicht 僕は恨まない
- Und wüssten's die Blumen, die kleinen 小さな花がわかってくれるなら
- Das ist ein Flöten und Geigen あれはフルートとヴァイオリン
- Hor' ich das Liedchen klingen あの歌がきこえてくると
- Ein Jüngling liebt ein Mädchen 若者がある娘を愛した
- Am leuchtenden Sommermorgen 耀ける夏の朝に
- Ich hab' im Traum geweinet 僕は夢の中で泣いていた
- Allnächtlich im Traume 僕は夜ごと君の夢を見る
- Aus alten Märchen 昔のおとぎ話の中から
- Die alten, bösen Lieder 昔のいまわしい歌
<アンコール>
- 君は花のように Du bist wie eine Blume
- 蓮の花 Die Lotosblume
- 酒場にて
- 赤とんぼ