ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

宮操子『陸軍省派遣極秘従軍舞踊団』

 舞踊家の宮操子(みや・みさこ、1907-2009)は岩手県盛岡市出身。1931年に舞踊家の江口隆哉(えぐち・たかや、1900-1977)と結婚し、共に同年暮ドイツに留学。1年ほどのベルリン滞在を経てドレスデンのマリー・ヴィグマン舞踊学校でノイエタンツ(Neue Tanz モダンダンス)を学ぶ。1933年暮に帰国、翌年江口・宮舞踊研究所設立。1937年の盧溝橋事件から日中戦争が始まる。1939年秋に陸軍省の要請で江口と共に「陸軍省派遣(マル秘)従軍舞踊団」を結成、同年、40年、41年と3回、それぞれ約2か月間の日程で華南、華中の前線部隊をまわり舞踊公演の慰問を続けた。1時間ほどの公演を1日3か所で行ったので、相当な数の日本兵がそれを観たと考えられる。1942年には大阪毎日新聞社からの依頼で「陸軍省派遣・毎日新聞社後援」の舞踊団を結成、シンガポールマレー半島ビルマで公演。1943年からは戦況が厳しくなったので、外地でなく国内各地での慰問公演を続けた。
 本書は第1章がドイツ留学、第2章が中国での公演、第3章が南方各地での公演について、戦後50年、宮操子が88歳になって綴った記録。自身の心情と各地の情勢が率直に語られている。

陸軍省派遣極秘従軍舞踊団 / 宮操子
 星雲社、1995
 20cm ; 301p
目次:
はじめに
第1章 ドイツ留学

  1. 好奇心と期待に胸踊らせながらいざドイツへ…12
  2. 「あなたのしていることはドイツのためにならない」? ドイツ国民に学ぶ「節約の思想」…30
  3. そこにはヒトラーの姿も……まさに映画の世界、華麗なる舞踏会で舞う…53
  4. 日本人クラブ「襲撃」される!…63
  5. ヒトラー、ついに表舞台に登場! そして……時代は変わった…72

第2章 極秘従軍舞踊団<中国大陸・シンガポール

  1. 男の熱気に酔いながら戦場へ 船中で魅せられた日本男児のたくましさ…101
  2. 笑いあり、涙ありの舞踊公演 自己主張を捨ててただ兵隊さんたちのために…105
  3. トラックで、船で、ときには戦車で……泥と誇りにまみれながら、舞踊団今日も戦場を行く…124
  4. 中国の軍人さんも舞踊団を歓迎? 謎・謎・謎に包まれた「懇親会」…147
  5. 戦う兵隊さんに陰の助っ人あり! 戦場の裏舞台で活躍する「裏方」たちの苦労と孤独…158
  6. 父を想い、母を想い、そして故郷を想いながら 戦い、傷ついて戦場に散った多くの若者たち…173
  7. 武器にされ、また運命を狂わされて 戦争の犠牲になった動物たち…187

第3章 イギリス人捕虜

  1. 敵の魚雷攻撃で危うく海の底へ 舞踊団、命がけのシンガポール上陸作戦…223
  2. 兵士たちの心の叫びに涙しながら舞った「戦友の遺骨を抱いて」…232
  3. ジョホオールバール、そしてビルマへ 心に残る「一期一会」の出会い…243
  4. 飢えに苦しみ、死の恐怖に怯えながら イギリス人捕虜とともに味わった四十日間の悪夢…264