ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

高橋アキの語る演奏会企画

 高橋アキさんの『パルランド:私のピアノ人生』には、演奏会企画についての一文がありました。現代音楽の演奏家として何十年も種々の演奏会に関わってこられただけに、ずっしりと胸に響きます。

仕事の周辺 6 プロジェクト
 良い演奏家はたくさんいるし、良い作品もたくさんある。だが、それらがバラバラに自己主張をしてもそこから運動は起こりにくい。そこで良い企画が必要になってくる。
 では「良い企画」とは何か。それは「未来への可能性・展望を示すこと」だと思う。たとえ古い時代の作品を演奏するにしても、そこに未来へのプロジェクションがなければ意味がないと思う。
 ところで欧米各地で日本の現代音楽を紹介するケースが最近増えてきた。この夏は、私の所属する演奏グループ「サウンド・スペース=アーク」がデンマークの音楽祭に参加することになっている。
 このレアケンボー音楽祭は、主催・企画を伯爵の位を持つ女性が一人でやっている。彼女は先祖代々からの美しいお城で、十五年前にこの小さな音楽祭を始めた。その中で彼女はある国の現代音楽を二年がかりで紹介する。
 一年目はその国から演奏団体を呼び、その国の作品と、さらにデンマークの作曲家二人にその団体のために委嘱した作品を演奏する。二年目はその国の作曲家二人を呼び、その作品をデンマーク演奏家たちが演奏する。また、その国の現代音楽に関する資料をできるだけ集めて展示したり、討論会を開く。音楽祭が終わると、楽譜やレコードなどの資料を学生に使ってもらうために全部音楽学校に寄付するのだ。ユニークな企画だと思う。
 この三月に彼女を訪ねたら、一人で日本の現代音楽調べに没頭していた。

出典:高橋アキ『パルランド:私のピアノ人生』(春秋社、2013)p285-286

 デンマークのレアケンボー音楽祭について、もっと知りたいと思います。

追記

 2016年2月14日の演奏会の打ち上げで高橋アキさんにレアケンボーの綴りをうかがったら、「Lerchenborg」とのことでした。(2017.10.15追記)