ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

芥川也寸志とメシアン

 芥川也寸志が1956年前後にメシアンについて語った言葉。

 メシアン(O.Messiaen 1908〜)という現代フランスの作曲家は、複雑なインドのリズムに暗示を得て、まったく新しい形の音楽を書いています。東洋には古くからあったこういう不規則なリズムが、合理的な規則正しいリズムの伝統を持ったヨーロッパの作曲家に、新しい魅力を感じさせたのです。

出典:芥川也寸志『私の音楽談義』音楽之友社、1959)p71 http://d.hatena.ne.jp/nipponica-vla3/20100120/1263987599

メシアンやジョリベたちの「若いフランス」派は、たしかに黛君が言ったように人間性・抒情性・ベルリオーズ美学への復帰などを唱えているけれども、彼等の探求はより直接的なもの、絶対的なもの、たとえば音楽における量、運動、強度、等に向けられているのであって、人間性なり抒情性そのものに向けられているのではない。メシアンの場合「個性的なリズム」だとか「逆行不可能なリズム」だとか「不可能の魅力」とかいう言葉になって現われてきているので、彼の音楽の驚くべき幻想の効果というものは、そのリズムや旋法の不可能性を理解することによって初めてわかる性質のものだ。

出典:團伊玖磨芥川也寸志黛敏郎『現代音楽に関する3人の意見』中央公論社、1956)p101 http://d.hatena.ne.jp/nipponica-vla3/20100119/1263912027

 ここで案内されているメシアンの作品は『トゥーランガリラ交響曲』(1948)のことと思われます。芥川がインドを訪れたのは1957年、エローラ交響曲の作曲は1958年でした。『トゥーランガリラ』の日本初演1962年ですが、それ以前に録音がはいってきていたのでしょう。このころ『音楽芸術』誌上などにメシアンの記事が見られます。

現代フランス音楽の鬼才オリヴィエ・メシアン / 西山広一
音楽芸術 9巻12号 p8-13 音楽之友社 1951年12月

メシアンのトウラヌグウリイーラアー・交響曲 / 松平頼則
音楽芸術 12巻7号 p26-33 音楽之友社 1954年7月

トゥーランガリラ交響曲』の原綴りは"La Turangalîla-Symphonie"。
 ちなみに1948年から1956年までの日本の論文(CiNii)で「メシアン」を検索した結果は次の通り。http://ci.nii.ac.jp/search?q=%E3%83%A1%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%83%B3&range=0&nrid=&year_from=1948&year_to=1956&count=100&sortorder=2&type=1