ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

ヴァイオリニスト小林三吾

 『蟹工船』の作者小林多喜二(1903-1933)の話が今日の新聞に載っていた。小樽高等商業学校を出て北海道拓殖銀行に就職した多喜二は、初給料で弟の三吾のためにヴァイオリンを買ったという。

・・・大正末期はバイオリンが流行した時代である。あるとき、米屋の小僧が仕事を終えた後でバイオリンの稽古をしているのを見た多喜二たちの父親は、同じ境遇にある三吾にも買ってやりたいと思い、古道具屋に行った。三吾は子供の頃から音楽が好きだったのだ。
 だが値段が高く、買うことはできなかった。がっかりする父親の顔が忘れられなかった多喜二は、最初の給料でバイオリンを買って帰ったのだった。古道具屋のバイオリンからスタートした三吾は後にプロのバイオリニストになり、東京交響楽団などで活躍することになる。
日本経済新聞2015年4月12日詩歌・教養欄 梯久美子「愛の顛末・小林多喜二(2)恋と闘争」より)

 大正末期の北海道といえば、伊福部昭が音更でヴァイオリンを始め、札幌に移り作曲も始めたころ。ヴァイオリンがそんなに流行っていたとは。
 伊福部昭は1953年に山村聡監督の映画『蟹工船』の音楽を作曲している。その録音は東京交響楽団で、小林三吾が弾いていたという。

伊福部昭年譜(1914〜2006)http://d.hatena.ne.jp/nipponica-vla3/20130103/1357185254