ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

矢代秋雄『オルフェオの死』から(8)三善晃

 矢代秋雄の遺稿集『オルフェオの死』第2部では、三善晃にも触れられています。矢代がパリ国立高等音楽院に学んだのが1951年から56年、三善は1955年から58年にかけてでした。三善はこの遺稿集の編集者の一人で、矢代の年譜を編集しています。

告白的三善晃
 「諸君、脱帽し給え。天才が現われた!」思わず私は呟いた。
 はじめて三善晃君の作品に出合った時のことである。
 あれからもう七、八年経ってしまったが、その折の、ほとんど心臓が止まりそうな感動は今でもはっきりと思い出せるし、その後の彼の作品に接するたびにその思いは常に新たにされる。(p178)

 全く、彼は作曲するために生れてきたような人である。彼ほど本能的に曲が書け、構成していける人は、古今東西にも珍しいのではないかと思う。私が彼に圧倒されてしまったのも、その「本能的な音楽的創造性と構築性」―としか言いようのないもの―を、音の出ないスコアから感じ取ったからである。(p174)

 整然たる構成なしに立派な音楽はあり得ない。(中略)三善君における構成も明らかにこの種のものである。彼のソナタ形式アレグロ楽章をきいてみるがいい。今度の、この珠玉のような「ピアノ協奏曲」の第一部分とか、真に独創的で神聖な霊感に満ち、しかもその独創性ゆえにか不当に冷遇されまさに忘れ去られようとしている「交響的変容」の第一楽章など。(p175)

 次の三善晃/交響三章・総譜」の章でも、三善のこの傑作が出版されたことを激賞しています。

三善晃 交響三章 〔音楽之友社
http://www.ongakunotomo.co.jp/catalog/detail.php?code=480307