ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

安部幸明自伝(その1)

 クリティーク80編の「現代日本の作曲家」シリーズ5に掲載の自伝から抜粋編集しました。

第1章 音楽にすすむまで

 安部幸明は1911年(明治44)9月1日に、広島市にて生まれました。父親の転勤で東京、下関、徳島と移り、物心つくころからは千葉県松戸で過ごしたそうです。江戸川のほとりで暮らし、時々来る物売りのバイオリン弾きの音色に魅せられました。自分でやってみたいなと思い両親にねだりましたが、とりあってもらえませんでした。

 だが本で読むと、弓は馬のシッポを使い、松脂(やに)とあった。
 当時、父の勤務先への往復は馬で、別当さんといって馬の世話をする付き人がいた。それで、その人に馬のシッポを六、七本抜いてもらい、竹をまげて端と端にくくりつけ、庭の松の脂をつけ、家にあった琴を取り出してあてがったら、ヒューと音が出た。ともかく絃で弾く音が出た。これだこれだと、ますますバイオリンに憧れが出た。(p10)

 関東大震災(1923年)の後に東京府立第七中学(現在の都立隅田川高校)へ入り、金町に引っ越しました。学校でピアノを初めて聴きましたが、弦楽器ほど魅力を感じなかったとのこと。それでも音楽への憧れは強く、反対していた親もとにかくやらせてみようかということになり、バイオリンはもう遅いからとチェロで音楽学校を受けることになりました。そして酒井悌(1896-1959、1920年東京音楽学校卒)先生を紹介されたそうです。