伊福部昭先生に初めてお目にかかったのは1980年、先生66歳の時でした。ダンディでおしゃれな先生の印象はその後も2006年に亡くなられるまでずっと変わりませんでした。その先生のマナーについても、木部さんの本に書かれていました。
チェレプニンは伊福部に対し、紳士たるべき者のマナーを説くことがあった。
いわく、煙草は箱から取り出して喫むものじゃない。ケースに移し変えて、そこから取り出すようにせよ。
いわく、他人と酒を酌む場合、瓶はシルクの布で巻いて、銘柄が見えないようにせよ。
出典:木部与巴仁『伊福部昭・音楽家の誕生』(ボイジャー、2002)p179
なるほど、ロシア貴族のマナーが伊福部先生に伝えられていたのでした。先生の物腰は出雲の神官でらした家系から来ているものと思い込んでいましたが、そればかりではなかったことを初めて知りました。
『伊福部昭 : 日本の交響作品展 4 』(演奏会プログラム)http://d.hatena.ne.jp/nipponica-vla3/20100408/1270734205