ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

伊福部昭「師チェレプニンとの出会い」

 伊福部昭がチェレプニンに初めて会ったのは、彼の『日本狂詩曲』にチェレプニン賞の受賞が決まった翌年の1936年7月28日のことでした。この日に歌舞伎座の舞台を隣あって鑑賞したそうです。その翌日伊福部は横浜のホテルにチェレプニンを訪ねました。

 翌日、約束通り横浜の山手にあったブラッフ・ホテルに師を訪ねた。ホテルは個人別棟の造りで、ドアを開けると、そこが広間になっていたが、師は私を迎え入れると挨拶もそこそこにピアノに向い、私の提出作品『日本狂詩曲』のフル・スコアを信じ難い見事さで弾き通された。私はこの初めて見る世界のレベルの差にたじろぎ、ただ呆然と立ち竦んでいたのであった。
 然し、レッスンは懇切を極め、私の弱点や今後の留意点などを細かく教示し、更に、山に帰ってからも思い出せるようにと、要点を師自らシャーマーの五線紙にノートして下さった。
 幾枚かあるこのノートは、私にとって掛替えのない宝物である。

出典:「アレクサンドル・チェレプニンをめぐる作曲家たち」プログラム http://d.hatena.ne.jp/nipponica-vla3/20140221/1392987351