ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

荻野綾子『音、音、おと:オネッガア。ギーゼキング。モッソロウ機械音楽』

 荻野綾子がパリ滞在中に書いた文には、たくさんの音楽体験が綴られていました。朝起きた時から向かいの家のピアノ、二階のロシア人の蓄音機、中庭で流行歌のジンタ……。そして毎晩のように通う音楽会。
 シャトレの劇場で、ピエルネの指揮、コンセル・コロンヌ管弦楽団の演奏。オネゲル管弦楽曲「勝利のオラース」を作曲者指揮で。コンセル・パドルー管弦楽団の楽団員についてのコメントも。そしてギーゼキング

 ギーゼキングのピアノが一度聞きたいと思っていたら丁度パドル―で彼のプログラムを見たので喜んでしまった。近代音楽演奏家として特に高名な彼は、この日もベトウヴェンのG durコンチェルトの他は全てドビュスイ、ラヴェル等の近代楽を演奏した。まるで至れり尽くせりという弾き方だ。この偉大なるピアニストで第一に感じるのはソノレ(音、響鳴とでもいっておこう)だ。そして彼特有のエクスプレシオンで音楽を聞かせてくれた。

 またロシアのモッソロウ(モソロフ)の機械音楽を聞いた時は、オネゲルの『パシフィック231』を聞いた時の衝撃を思い出したと綴られていました。最後は次の言葉で締めくくられていました。

 私の研究心は花火のようにあふり来る。時代と音楽。今年は1931年だ。日本にも1931年の音楽の生まれん事を祈る。2月5日、夜


出典:『音楽世界』3巻4号(1931年) p57-61 (現代仮名遣いに直しました)