ニッポニカ・ビオラ弾きのブログ

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカのビオラ弾きのブログです

石井眞木と陳明志

 1997年3月の石井眞木作曲のバレエ《梵鐘の聲》録音の場面から抜粋。

■新たな出会いとヴィジョン
 ここで《梵鐘の聲》録音の場面に戻ろう。行動する石井眞木は、拘束性が強いが故に、これまで後進の指導にあたることを避けて来た。しかし、「将来重要な役割を担うであろう人材を、自身の関わる音楽製作の現場に置き、多くを吸収させよう」との石井の意図のもと、二人の中国の青年作曲家、秦文琛と陳明志がその場に立ち会っていた。これがヴィジョン構築のための一つの仕掛けであった。
 秦は内モンゴル出身、現在中央音楽学院の教師を務め、ちょうどこの時期、石井が理事を務める日本作曲家協議会の尽力により文化庁研修生として来日中であった。陳は香港出身、91年より日本で現代音楽を学んでいる。両名を見守る石井のまなざしは優しく暖かい。一時苦渋を忘れ、若い世代に託すヴィジョンをそこに見ているからだ。陳とは1995年東京で出会い、翌年4月、石井が実行委員長となって開催した「日中友好合作日本現代管弦楽作品音楽会“東京の響きin北京”」の際に陳を同行し訪中。陳の紹介によって、中央音楽学院作曲系の教授陣と交流の機会を持ち、そこに秦文琛も同席していた。
 ここでの出会いがきっかけとなり、石井と中国の作曲家の間で急速に親近感と信頼関係が芽生えた。欧米の現代作曲技法を学んだ上で、自己の伝統的な音楽観を如何にして創作に反映させるか、これは日、中双方の作曲家に共通する課題であり、また、日本の伝統音楽の源流を遡ればその多くが中国と深く関わりがある。(後略)

出典:司東玲美「アジアに新たな芸術音楽の世界を築く:石井眞木の抱くヴィジョン」(『音楽芸術』55巻12号1997年12月p32-36)


陳明志作品との出会い:第2回日中友好合作現代音楽祭in東京/北京2004 室内楽演奏会 http://d.hatena.ne.jp/nipponica-vla3/20130613/

秦文琛作品の演奏歴:『第2回日中友好合作現代音楽祭in東京/北京 2004』(演奏会プログラム)http://d.hatena.ne.jp/nipponica-vla3/20130415